ヤチョラー界レジェンド 考古学者の河内さん

文具メーカーのコクヨが1959年に測量用ノートとして発売を開始して以降、ロングセラーの「野帳」が近年じわりと人気を集めている。胸ポケットに入るサイズ感と、立ったままでも書きやすいハード表紙が特徴。愛用者は「ヤチョラー」と呼ばれるが、この業界のレジェンドが和歌山県岩出市にいる。野帳を愛して40年、考古学者の河内一浩さん(59)にその魅力を聞いた。

河内さんは19歳の時に大学の考古学研究室で野帳と出合って以来、幼い頃から大好きな埴輪(はにわ)研究に欠かせないアイテムとして、主に発掘現場の特徴や周辺の様子、出土品などの詳細をメモし続けてきた。その数は560冊に及び、全て大切に保管している。

河内さんは「持ちやすさやサイズ感などが魅力。一般的なノートは規格がばらばらだが、統一されているのがいい」と笑顔。日記のような感覚で、備忘録、雑記帳としても活用の幅が広がるという。

「40年間の記録が詰まった歴史書」という河内さんの野帳は、文字だけでなく丁寧なイラストも描かれており、野帳サイズにも対応した小さな色鉛筆や絵の具セットは必需品。細かな文字や絵がびっしりと記録された野帳は目を引き、「河内野帳」として展示会が開かれるほど知られている。

ことしから始まった和歌山電鐵㈱の「貴志川線古墳巡りの旅キャンペーン」では、実際に河内さんが車窓から古墳を眺め、野帳に記したイラストがガイドに採用された。ニタマ駅長の刻印入りオリジナル測量野帳も誕生するなど、野帳だけでなく、考古学の魅力を広く伝えている。

羽曳野市教育委員会のスポーツ振興課で主幹を務めるなど、幅広く活動するエネルギー源は、埴輪愛。「調べれば調べるほど面白い」と埴輪愛を語る河内さんの目は、まるで少年のように輝く。

特に、出所や時代が分からない「名無しの埴輪」を調査するのが面白いといい、野帳と共に蓄積してきた知識や経験を基に調べる。情報が明らかになった埴輪からは「ありがとう」と言われている気がすると笑顔の河内さん。今後も野帳を手に、大好きな埴輪研究を続けていくという。

 

野帳を手に笑顔の河内さん

 

40年間の歴史が詰まった「河内野帳」