かがり火の幽玄の世界 2年ぶり万葉薪能

第22回和歌の浦万葉薪能が10日、和歌山市和歌浦南の片男波公園野外ステージで開かれ、約450人の観客は、かがり火に照らされた舞台で演じられる幽玄の世界を堪能した。

NPO法人「和歌の浦万葉薪能の会」が主催。昨年はコロナ禍で延期となり、2年ぶりの開催となった。

大蔵流狂言師・茂山逸平さんたちによる狂言「棒縛(ぼうしばり)」では、主人に腕を縛られた2人がどうにかして酒を飲もうと試行錯誤する姿をコミカルに演じ、客席の笑いを誘った。

続いて上演された能「熊坂(くまさか)」は、美濃の国青野が原を舞台に、牛若丸との戦いに敗れた盗賊・熊坂長範の亡霊が潮風に吹かれてかがり火が揺らめく中、登場。シテ(主人公)を演じた観世流能楽師・片山九郎右衛門さんは、長刀を手に豪快で迫力ある舞を披露し、力強い地謡やはやしと共に、観客を魅了した。

また同市の観世流能楽師・小林慶三さんと京都の同・橋本忠樹さん、金春流太鼓方・前川光範さんによる能楽ワークショップを受講した市民の成果も発表され、伝統文化を次世代へとつなぐ子どもたちの元気ある謡声や音色が万葉の地・和歌の浦に響いた。

今回の舞台で「蝉丸」を舞った岡田葵さん(15)は4歳から能ワークショップに参加しているといい「悲しい曲の内容を意識しながら舞った。今までで一番難しかったから達成感がある」と笑顔。おととしに続き観能した海南市の濵井美千代さん(76)は「能装束が好きでとても美しかった。能楽堂とはまた違う雰囲気を味わえた」と話していた。

豪快な舞の能「熊坂」

豪快な舞の能「熊坂」