松下記念資料館など2件 国登録文化財に
和歌山市岩橋の紀伊風土記の丘松下記念資料館、田辺市上秋津の旧上秋津小学校校舎(秋津野ガルテン)の2件が、国登録有形文化財に新規登録される。国の文化審議会(佐藤信会長)が文部科学大臣に答申した。今回を含めて県内の国登録有形文化財は111カ所、303件となる。【写真は県教育委員会提供】
松下記念資料館は、特別史跡・岩橋千塚古墳群とその周辺環境を保全管理するために整備された県立紀伊風土記の丘の中核施設であり、和歌山市出身の実業家・松下幸之助の寄付により1971年に竣工した。
設計は、岡山県を中心に活躍した建築家・浦辺鎮太郎が代表を務める浦辺建築事務所が担当。鉄筋コンクリート造り平屋建て地階付きで、古墳群のある丘陵の周辺景観に配慮し、ボリュームを抑えた外観となっている。モダニズムを基調としつつも、大面取りされた柱形(はしらがた)や、伝統的な腰長押(こしなげし)を模した水切が和風を思わせる。
また、地元特産の紀州青石を一面に貼り付けた外壁や銅鐸を模した面格子などにより、地方性や施設の性格が表現された特徴ある意匠となっている。
県内には著名建築家が手掛けた近現代建築の作品は少なく、造形の規範となる貴重な文化財とされている。
旧上秋津小学校校舎は、県南部の農村地域である上秋津地区に位置する。小学校が移転した後、公益社団法人上秋津愛郷会が旧校舎と土地を購入し、2008年度から、農業法人株式会社秋津野が都市と農村の交流施設「秋津野ガルテン」として活用している。
1953年に建設され、木造2階建て、切妻造り、瓦ぶき、外観は下見板張り。内部は片廊下式で、北側に廊下を通して南側に各室が並ぶ。
校舎2階北側の中央付近から通路を突き出し、背面側の丘上への避難路を確保している他、木造校舎ながらも鉄筋コンクリート製の境界壁と防火用の鉄扉で防火面を強化し、教室や廊下にも構造面の強化が施され、防災を重視した造りが特徴となっている。
校舎としての役目を終えた後も、都市農村交流施設として活用され、地域の歴史的景観の形成、地域の活性化に寄与している。