情報連携など課題調査 16歳虐待死検証委
昨年6月に和歌山市の鶴﨑心桜(こころ)さん(当時16)が死亡した虐待事件を受け県は16日、有識者による児童虐待等要保護事例検証委員会を設置し、同市の県民文化会館で初会合を開いた。鶴﨑さんが通っていた中学校から児童相談所への情報の連携ができていたかなど、事件に至る経緯に問題がなかったか検証し、再発防止策を含めて年内をめどに報告書をまとめる。
鶴﨑さんは同市加納のアパートで全身にあざのある状態で発見され、死亡が確認された。この事件では、母親の再婚相手で同居していた有田市の派遣社員、木下匠(しょう)被告(40)が保護責任者遺棄致死罪で起訴され、鶴﨑さんが亡くなった同じ日に関西国際空港連絡橋(大阪府泉佐野市)から飛び降りて死亡した鶴﨑さんの母親(当時37)が同容疑で書類送検されている。
検証委は、児童虐待防止法に基づき、死亡した児童の視点に立った原因分析、必要な再発防止策を検討することを目的とし、委員は弁護士、学識経験者、民生児童委員ら5人。会合は非公開で、この日は終了後に桑原義登委員長(和歌山信愛大学教授)と県子ども未来課の鈴木玲課長が記者会見した。
会見によると、県の児童相談所は鶴﨑さんに関する相談を2回受けている。1回目は2013年6月で、夜に鶴﨑さんが1人で路上にいるとの通告を受け、実父とやり取りの上、問題が解決したとして14年1月に指導を終了している。
2回目は鶴﨑さんが木下容疑者と同居を始めた頃に当たる18年10月。当時の保護者から非行に関する相談があり、翌11月に問題は解決したとしている。
また、県が和歌山市から受けた報告では、鶴﨑さんが通っていた中学校は、身体的虐待が疑われる情報を把握していたという。
検証委では、中学校と児童相談所の連携などの対応の在り方を検証するため、鶴﨑さんと関わった各機関のヒアリング調査などを進める。
桑原委員長は「事件の背景を明らかにし、プロセスを丁寧に見ていかないといけない」と話した。
検証委は今後、1カ月に1回、8回程度の開催を予定しているが、裁判の状況により回数や終了時期が変わる場合があるとしている。