雑賀崎のハナフリを絵本に すけのさんが出版
和歌山県紀美野町のイラストレーター、すけのあずさん(35)が絵本作家として初めての絵本『うみのハナ』をBL出版㈱から出版した。和歌山市雑賀崎に伝わり、彼岸の中日に夕日が海に沈む時に花が降るように見える現象「ハナフリ」を見る風習を題材にした。水彩絵の具を使って柔らかなタッチで表現し、4年かけて完成。すけのさんは「絵本をきっかけに雑賀崎に足を運んでもらえれば。それぞれの感性で読んで見てほしい」と笑顔で話している。
すけのさんは大阪府出身。京都精華大学芸術学部マンガ学科卒業。高校生の時にBL出版の文字のない白黒デッサン画の絵本「アンジュール」を読み「絵本を出すことができるならBL出版がいいな」と思ったという。
大学卒業後は、似顔絵や挿絵などを中心に活動。子どもの本専門店メリーゴーランドの「絵本塾」で絵本作りを学び、2020年、第21回ピンポイント絵本コンペで同書の元となる「うみのハナ」で最優秀賞を受けた。
すけのさんは数年前、初めて雑賀崎を訪れ、日本とは思えない異国情緒あふれる町並みに「絵になる」と感動。地域に伝わるハナフリの話を聞いたという。
灯台に上り海の景色に「他にはない特別感を覚えた」と振り返り、彼岸に夕日を眺める人を見て、「人それぞれ心に思うことがあり、願いながら夕日を眺めているのが印象的だった」と話す。
雑賀崎に残る理髪店で話を聞いたことをきっかけにストーリーを考えた。
物語は理髪店を営む老夫婦と孫のふうちゃんの話。ある日「ハナフリ」見るため灯台を訪れた祖母とふうちゃん。大切な人を思い、受け継がれる風習と豊かな海の景観がこれからも変わらないことを願うという物語。
すけのさんは、時間とともに変化する空の色にこだわった。出版するまでに何度も修正を重ねるなど挫折しそうになったこともあったといい、完成した絵本を手にした時は「必死すぎて、やっとできたという思い。うれしい」と安堵(あんど)したそう。
絵本は和歌山市のTSUTAYA WAYガーデンパーク和歌山店や宮脇書店ロイネット和歌山店、海南市の旧田島うるし工場オールドファクトリーブックスなどで購入可能。
また、すけのさんは子どもたちにハナフリを伝えようと、和歌山市に絵本10冊を寄贈。市民図書館や地元の雑賀崎小学校などに配られる。