県内のみで栽培「つきあかり」
前号では、全国3位の栽培面積を誇り、さまざまな味わい方が楽しめる「川中島白桃」を取り上げた。今週は、和歌山県でのみ栽培されている希少品種「つきあかり」を紹介したい。
つきあかりは、1991年に農水省果樹試験場で「まさひめ」と「あかつき」を交配し選抜育成された品種。果肉の色や形から、2008年につきあかりと命名され、2010年に品種登録された。
果実の重さは250㌘程度。果皮は黄色をしており赤い着色は少なく、黄桃ならではの良い香りが食欲をそそる。果皮と同じく果肉も黄色で、食してみると、まるでマンゴーのようなとろける食感。糖度は平均で14%程度と甘味が先行し、酸味は少ない。
つきあかりのような黄肉の桃は、カロテンを多く含み、皮膚や粘膜を丈夫に保ち、視力の維持やがんの予防、免疫力の強化、アンチエイジングなど、健康を保つために有効とされる。
しかし、缶詰用に加工されるイメージが強く、国内での栽培は伸び悩んでいたという。優れた品質を持つ新品種の育成が求められる中、登場したのがつきあかりである。主に晩生の時期に多い黄肉の桃であるが、つきあかりの旬は7月下旬。同系統である「黄金桃」と比べ2週間程度、収穫時期が早く、桃シーズンの早い時期から楽しめる品種となっている。
栽培適地は東北から九州まで栽培可能とされるが、2018年の農水省統計によると、つきあかりの栽培地は和歌山県のみ。栽培面積はわずか5㌶で、県内においても極めて希少な品種といえる。
出荷時期が1週間程度と短く、栽培する農家も少ないつきあかり。来シーズン、店頭で見ることがあれば、ぜひ購入し、その味わいを確かめてほしい。
(次田尚弘/和歌山市)