静岡生まれの人気品種「章姫」

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前号では、いちごの中でもビタミンCが豊富に含まれ、新たな農法の導入により品質の向上が図られている「さちのか」を取り上げた。今週も12月ごろから店頭に並ぶ「章姫(あきひめ)」を紹介したい。
章姫は静岡県の農家が「久能早生(くのうわせ)」と「女峰(にょほう)」を交配し育成した品種。1992年に品種登録され、静岡県を中心に栽培が広がった。名前の由来は育成した農家の方の名前に由来しているという。
特徴は果実が縦長の円すい形をしていること。一般的ないちごはふっくらとした印象であるが、章姫は縦長である。果実は柔らかく口当たりが良い。果肉は外側には赤みがあり、中心にいくほど白くなる。果汁が豊富で酸味が少なくしっかりとした甘味もある。
果実が柔らかいことから長時間の輸送に向かず、春先になると果実の糖度と硬度の低下が見られることが課題とされている。収穫の最盛期は2月から4月で、和歌山県内でも栽培されている。
昨今、章姫の苗が海外に持ち出され、別品種との交配により作られたいちごが栽培されるなど、国際的な問題が起きている。日本で生まれた優良な新品種は、日本の農業の発展に貢献するもので、品種開発には多額のコストと労力がかけられている。
優良な新品種の流出を抑えることは、産地づくりを進める都道府県や高付加価値の農作物を出荷する農家にとって重要であることから、2022年4月に改正種苗法が施行。品種登録された品種を自家増殖する際は、育成者権を持つ育成者権者の許諾が必要となるなど、育成者と品種の流出を守る仕組みができている。
高い技術力とたゆまぬ努力から生まれる新品種。日本のブランドとして認められ、高い品質のいちごが世界中で親しまれることを期待したい。
(次田尚弘/和歌山市)