トンカラポンガ活躍 笑いと元気届ける楽団

ダウン症や発達障害などのメンバー10人で構成し、和歌山県紀の川市を拠点に活動するちんどん楽団「トンカラポンガ」――。サックス、ちんどん太鼓などが奏でる懐かしい音楽と、お尻を振るなどユニークなポーズで踊るダンス、傘を回す派手なパフォーマンスで、たくさんの人に笑いと元気を届けている。

結成は8年前。福祉作業所で支援員として働いていた奥野亮平さん(42)と妻の麻美さん(39)が立ち上げた。

作業に慣れず、ストレスからいたずらをしてスタッフを困らせている利用者に「何か発散できる場所をつくりたい」と考えたのが始まり。亮平さんはアジアを旅した時、街頭で障害のある人が決して上手とはいえない芸を自信満々で見せていたのを思い出した。「一度やってみよう」と、利用者に楽器演奏とダンスを教えたところ、思った以上の出来に「これはものになる」と確信。真剣に取り組むみことを決めた。

メンバーの年齢は25歳から52歳。亮平さんと麻美さんが、メンバーの良いところを宝探しのように見つけて磨いていく。そのパフォーマンスは「面白い」と話題になり、県内だけでなく近畿各地でも公演を行い、笑いと元気の輪は広がっている。

 

25~52歳の多彩なメンバー

 

由来はスワヒリ語 ポジティブに活動

グループ名の「トンカラ」とはスワヒリ語で「段ボール」の意味。普段はいらないが、引っ越しや物を送る時には重宝する。そんなふうに、必要な場所に演奏しに行けるような楽団になりたいという意味を込めた。「ポンガ」は〝ポンコツ楽団〟の略。廃材で作った楽器も使い、そんなにいろいろな演奏はできないが、みんなで力を合わせれば何とかなる、というポジティブな姿勢を表している。

練習は紀の川市名手市場の名手公民館で週に2回、約1時間半行っている。亮平さんが音楽と大道具、麻美さんが演出を担当。麻美さんが一人ひとりの個性に合わせ、踊りやポーズを考えて、何度も何度も繰り返し教え、間違えたら「それも面白い」と取り入れる。楽器や踊りをすることで、メンバーの心は落ち着いたそうで、「まず自分たちが楽しめること、心が整うことを一番大事にしている」と麻美さんは言う。

センターで踊る中村大樹さん(30)は、人前でしゃべることができないほどの内気だった。最初はお客さんの前で下を向いて恥ずかしがっていたが、ある日急にスイッチが入り、堂々としたエンターテイナーになったという。「厳しい特訓があるけど、お客さんの拍手や笑い声を聞くと、とてもうれしい」と話す。

みんなと踊るとストレスを発散できて楽しいという滝川幸法さん(35)は「ここだけが自分が輝ける場所。ずっと続けたい」と懸命に練習に取り組んでいる。

 

夢は海外公演!? 練習に励む日々

昨年7月、奥野さん夫妻は勤めていた福祉作業所を辞め、独立した。紀の川市名手市場の古い一軒家を買い、自分たちでリフォーム。ことし4月に県の指定を受け、就労継続支援B型事業所「ポルテク」を開設した。「トンカラポンガ」のメンバーはここで、刺しゅう、イラストなどの作品を作りながら、楽器や踊りの練習に励んでいる。

亮平さんと麻美さんは「関西各地を巡るツアーができたらいいなと思っている。また、ゲストに楽団を招き、大きなホールでパフォーマンスをしてみたい」と今後の目標を話し、「いつかは海外でやってみたい夢はある。でもメンバーは家に近いところの方がいいって言うんでしょうね」と笑った。

公演の依頼、問い合わせはポルテク(℡0736・67・7999)。