奈良で栽培進む新品種「珠姫」
前号では、奈良県のオリジナル品種で、バランスの良い食味が特徴の「古都華(ことか)」を取り上げた。今週も奈良県で栽培されている「珠姫(たまひめ)」を紹介したい。
珠姫は2019年に品種登録されたいちご。奈良県農業研究開発センターが「さちのか」と「とちおとめ」の交配から得られた「系統22-19-1」という品種に、和歌山県オリジナル品種である「まりひめ」を交配し育成したもの。2014年に得られた約4500株の中から選抜が行われたという。
果実は上部が丸く卵型をしており、平均の果重は30㌘を超え大粒。果皮の色はややオレンジ色がかった赤色で光沢がある。果肉も果皮と同様にオレンジ色がかった赤色である。
食してみると酸味が少なくさっぱりとした甘味がある。古都華は糖度と酸度が高く、それぞれのバランスが取れた品種であることから特徴が異なり、酸味が苦手な人でも食べられるという工夫がされている。
栽培は奈良県内に限られ、まだ生産量は多くないが、和歌山県内でも流通。価格は果実が大きいため1粒あたりの単価は一般的ないちごと比べやや高めだが、大粒で美しい形に目を引かれる。収穫は12月から始まり翌5月ごろまで。
奈良県は1980年ごろまで全国3位の作付面積を誇るいちごの産地であったが、2018年時点では全国15位。一時期ほどではなくなったものの現在も生産量は多く、現在でも関西では有数の産地といえる。
和歌山県オリジナル品種のまりひめを親に持つ珠姫。大粒に育つまりひめの特徴を受け継ぎ、お隣の奈良県で栽培が進む珠姫を応援していきたい。
(次田尚弘/和歌山市)