防災対策で評価 臨海企業連絡会が総理大臣表彰
本年度の「防災功労者内閣総理大臣表彰」に、和歌山県内からは海南市の自治会自主防災会・臨海企業連絡会(吉川裕彰会長)が選ばれた。地域住民と企業が一体となって防災対策の推進に取り組み、備蓄物資の整備や点検、夜間の訓練活動など地域防災力の強化に尽力してきたことなどが評価された。吉川会長(75)は「立派な表彰を受け恐縮です。これからも他の自治会から見ても納得してもらえるような組織に少しずつ育てていきたい」と受賞を喜んだ。
同表彰は、災害時における人命救助や被害の拡大防止などの防災活動の実施、平時における防災思想の普及、防災体制の整備の面で貢献し、その功績が顕著であると認められる団体または個人を対象に活動をたたえるもの。
同連絡会は、藤白南、船津浜、宮の浜の三つの自治会自主防災会とENEOS和歌山石油精製㈱で構成される。
2011年の東日本大震災で甚大な津波被害が発生したことから「この地域も同様のことが起きる可能性がある。防災に取り組まないといけない」と、南海トラフ地震に備えて発足した。
8年前に吉川さんが会長となり、情報収集や伝達活動、救助活動などの強化を図るため、避難時に担当する役割の組織図を作成。避難場所に防災倉庫を設置し、資材や備蓄物資の定期点検や入れ替えなどを行った。
継続的に避難訓練にも取り組んだ。藤白神社が一時避難所になっていることから、津波を想定した訓練を実施。避難する人をスムーズに誘導できるように集合場所の目印や案内看板の準備、避難にかかった時間を計った。避難に徒歩で最大25分かかることが分かり、津波の到達予想時間が30~40分であることから、解決策としてリヤカーを2台購入。夜の暗さを知ってもらいたいと、18年からは夜間の訓練も毎年行い、発電機の操作や活動の確認などに取り組んだ。吉川会長は「誰一人、犠牲にしたくない。自然に体が動くように何回も訓練をすることが大事」と話す。
ことし6月に起きた豪雨災害の際、吉川会長は仕事で和歌山市にいたため、海南市に戻るまで数時間かかったという。「これが地震だったら、避難運営の指揮は誰が執るのだろう」と新たな課題も浮かび上がった。吉川会長は「会長が不在時でも機能する組織づくりを考えていきたい。今後も住民が安心して暮らせるよう、訓練を重ねていきたい」と話した。