赤色で大粒の「クイーンニーナ」
前号では、7月下旬に成熟する新品種で、気候変動に対応した「ブラックビート」を取り上げた。今週も「巨峰」や「ピオーネ」を意識し、それらとの違いを新しい価値として売り出している「クイーンニーナ」を紹介したい。
クイーンニーナは果皮の色が赤く食味に優れた大粒のぶどう。1992年に広島県の果樹研究所で「安芸津20号」と「安芸クイーン」を交配し育成したもので、2011年に品種登録された。巨峰やピオーネと異なる見た目で、食味に優れ、種なし栽培が可能な大粒品種の育成を目指し育成された。
果実は1粒あたり17㌘程度と大粒。果肉がしっかりとしており歯切れが良い。糖度は20度を超える一方、酸味が低いことから、さっぱりとした味わいというより、甘さが口に残るという印象。果汁は多くみずみずしい。巨峰やピオーネに似た香り(フォクシー香)がある。
名前の由来は、親である安芸クイーンの旧系統名が「安芸津27号」という名称であったことから、数字の27を「ニーナ」と読み替え、さらに、スペイン語で女の子を意味する「ニーチャ」にちなんでいるという。
収穫時期は、巨峰やピオーネよりもやや遅めの8月下旬から9月上旬ごろ。東北南部から九州まで、巨峰と同じ地域で栽培ができる。2020年の農水省統計によると、栽培面積の第1位は長野県(19㌶)で全国シェアの3割以上を占める。第2位が山梨県(12㌶)、第3位が愛知県(5㌶)と続く。和歌山県は統計上の数値は無いが、わずかながら栽培されており、筆者は県内の産直市場で購入した。
巨峰やピオーネと時期を同じくして出回り、それらとは一線を画した見た目や味わいが特徴のクイーンニーナ。店頭で見る機会があれば、ぜひ食べてみてほしい。
(次田尚弘/和歌山市)