果樹王国支え半世紀 名手上唯一の選果場存続へ

和歌山県紀の川市名手上でキウイや柿などを栽培する農家の中山英樹さん(49)は、地域で半世紀以上にわたり稼働してきた唯一の選果場が閉業すると聞き、「地域にとって必要なもの。途絶えさせてはいけない」と、前任者から引き継いだ。中山さんは長男の朋樹さん(26)と共に故障していた選果機を手作業で修理し、11月上旬までに柿とキウイの選果を終了。果樹栽培の盛んな同市の選果拠点として、新たな歴史が動き出した。

中山さんは7月中旬、高齢のために閉業を考えていた70代の前任者から選果場を引き継ぎ、新たに四十八瀬西山青果㈱として事業を始めた。現在は近隣に住む約10人が勤め、主に同市打田地区やかつらぎ町などの地域周辺で収穫された果物を、大きさごとに分けて出荷している。

選果機は10年に1度は買い替えが必要とされるが、中山さんが選果場を引き継いだ際には、すでに18年が経過していた。複雑な修理が必要な中、中山さんは「地域のみんなが活用でき、名手上の名前を世の中に広めていくために、なんとかできると信じていた」と話す。業者も修理を諦めた選果機を、朋樹さんと手作業で修復した。

柿の選果では近隣約30件の農家の収穫物を扱い、東北や関東、中部地方の市場などに出荷した。

農家の高齢化や担い手不足など、農業を取り巻く環境は厳しく、課題も多い中、中山さんは名手上の果物を守るため、ブランド化なども計画。「ここから生まれる味にほれて、名手上で農業をしたいという人が増えてほしい」と話し、選果場の存続を機に新規就農者らの受け入れ態勢を整え、地域に住む人を増やし、空き家問題の解決などにつなげようとも考えている。

同選果場では12~1月にミカン、2~4月にハッサクの選果を予定している。

選果機に柿を流す中山英樹さん㊨と息子の朋樹さん

選果機に柿を流す中山英樹さん㊨と息子の朋樹さん