漏水防止カバー設置 六十谷水管橋崩落後に開発

和歌山市企業局と民間企業2社が共同開発した、水道管接合部の漏水を防ぎ、耐震性を向上させるカバーの設置工事が21日、2年前に崩落事故があった六十谷水管橋で始まった。年内に設置した後、来年から約1年間の実証実験を行い、性能や耐久性の確認などを進める。

設置が始まった漏水防止カバーは、市企業局と水道設備製造業の大成機工㈱(大阪市)、金属加工業の日本ニューロン㈱(京都府精華町)の2社が昨年9月から共同開発を進めてきたもの。

送水管には、地震などによる管路のゆがみの影響を吸収するため、接合部に伸縮性を備えた「伸縮可とう管」がある。新開発の漏水防止カバーは、伸縮可とう管を蛇腹状のステンレス製のカバーで覆って設置するもので、接合部が破損した場合でも漏水を防ぎ、伸縮機能などが向上することにより、耐震性も高まる。

蛇腹部分には「特殊ベローズ形状」と呼ばれる新構造を採用し、伸縮性能を高めている。六十谷水管橋に現在設置されている伸縮可とう管の性能は最大5㌢の伸び縮みであるのに対し、4倍の20㌢まで伸び、2倍の10㌢の縮みに対応するカバーとなっている。既設の伸縮可とう管にはなかった、管の中心のずれに5㌢まで対応する性能もあり、これまでの実験で確認されている。

既存の送水管に外から設置するため、施工時に断水しないことも大きなメリット。10月に東京都内で開かれた日本水道協会全国会議で共同開発チームが新製品の発表を行い、すでに全国の水道事業体から複数の問い合わせがあるという。来年をめどに販売開始を目指している。

21日、六十谷水管橋の直径90㌢の送水管の外側に、漏水防止カバーを仮設置する作業が始まった。カバー全体の重さは780㌔。特殊ベローズ部分は150㌔、最大外径130㌢、長さ71㌢で、半円状の二つのパーツをクレーンで釣り上げ、送水管にかぶせる作業が行われ、報道関係者に公開された。

今後はパーツを溶接し、設置作業は年内に終わる予定。来年からの実証実験では、1年間のさまざまな気象条件などの中で性能に問題は起きないか、さびなどの劣化への対応なども確認し、フィードバックすることで、製品としてさらに性能を高めることを目指していく。

六十谷水管橋は現在、耐震診断を行っており、その結果によって、漏水防止カバーの設置個所を増やす必要があるかなどを判断する。

市企業局水道企画課の宮之原和俊班長は「漏水の対応はもちろん、簡易に取り付けることで耐震性も増し、大変期待している製品になる。崩落事故の反省、経験を形にでき、水道事業の一助になるスタートを切れたという思いはある」と話した。

漏水防止カバーの特殊ベローズを送水管に設置する作業員ら

漏水防止カバーの特殊ベローズを送水管に設置する作業員ら