社会に恩返し ダンス教室開く片山美織さん

「体と音楽があれば誰でも踊れる」をモットーに、楽しく指導する和歌山市のダンス教室TRSteps代表の片山美織さん(39)。次女の怜和(れな)さん(8)が2歳で脳腫瘍になり闘病したことをきっかけに、小児がんの子どもや病院スタッフのために寄付しようと2019年にダンス教室を開いた。現在は発達障害のある子どもが通う保育園でも踊る楽しさを伝えている。

熊本県出身の片山さんは、子どもの頃から踊るのが好きで、小学校で6年間ダンスを習い、関西学院大学でダンスサークルに所属。ダンス、勉強、バイトに明け暮れる学生生活を過ごした。大阪で旅行関係の会社に就職した後もダンスを続け、26歳でダンスサークルの先輩だった夫と結婚。夫の職場がある和歌山市で暮らすことになった。

結婚後もダンスを続けていたが、長女千愛(ちな)さんの妊娠を機にやめ、子育てに追われる日々。3年後に怜和さんが産まれた頃には、ダンスをやめた体は硬くなり、授乳や抱っこで体は悲鳴を上げていた。「ダンスをして体を動かしたい」と思っても、幼い2人の子を連れて行ける場所はなく「ないなら自分でつくろう」と月に1回ママのためのダンスサークルをつくり、思いっ切り踊った。

2年後、2歳3カ月だった怜和さんが突然「頭が痛い」と言い出し、2~3日に1回、嘔吐(おうと)する日が続いた。県立医大で検査をすると頭の真ん中に腫瘍が見つかった。その日からダンスをやめ、闘病を支える日々。頭部を開いて腫瘍を取り除く手術は10時間にも及んだ。片山さんは病院で待っていることができず、和歌浦天満宮に行き、ひたすら祈り続けた。

無事に手術は成功。怜和さんは話せず、食べられず、歩けなくなっていたが片山さんは「命があるだけ良かった」と医師と神に感謝したという。その後は大阪の病院で抗がん剤治療を続け、怜和さんの状態は徐々に元に戻り、1年後にはすっかり元気になり退院した。片山さんは「病院に恩返しがしたい」と、自分にできることを考え、ダンス教室を開き収益を寄付することに決めた。

19年1月、友人などに声をかけ8人で週1回のダンス教室をスタート。徐々に人数は増え、今では41人になった。千愛さんと怜和さんも教室に参加し、元気に踊っている。今後は発達障害のある子どものクラスも開設予定だという。

「自分が決めたことを子どもに強要せず、みんなの発達や個性に合わせて自分も楽しむようにしている」という片山さん。活動を続ける中、小児がん以外のことにも目が向くようになり、昨年6月にはNPO法人Happiness Kids Labo(ハピネスキッズラボ)を設立。障害や病気、難病を抱える子どもたちも、学校に行けても行けてなくても、それぞれが自分は主役だと思える社会を目指し、病児・障害児支援、親子交流支援、フェアトレード啓発などを行っている。

「夢は病気や障害のあるなし関係なく、みんな一緒にエンターテインメントを集結した大きなステージをつくりたい」と、笑顔で話す片山さん。やりたいことは今後無限大に広がっていきそうだ。

問い合わせはハピネスキッズラボホームページ(https://happiness-kids.org/)、インスタグラム(@tr_steps)、(℡073・454・3111)。

片山さんと千愛さん㊨、怜和さん

片山さんと千愛さん㊨、怜和さん