「今昔物語」第2集 紀州文化の会が発行

文化の力で和歌山のまちおこしに取り組む「紀州文化の会」(大江寛代表)が毎年出版している「あがらの和歌山」シリーズの第17弾『気になる和歌山今昔物語』第2集が13日、発売される。和歌山市各地区の成り立ちや移り変わり、代表的な店舗などを紹介するシリーズの2冊目。今回はアロチや美園町、友田町をはじめJR和歌山駅西側の商業地や歓楽街を含む6地区を取り上げている。

同会は2004年7月に発足し、7人の会員が活動。「ええとこあるで和歌山」を合言葉に、和歌山のファンを増やそうと、地元の歴史、地名、方言、人物など幅広いテーマを扱う出版活動を続け、制作した書籍は今回で19冊目となる。

新シリーズの『気になる和歌山今昔物語』は、「一般の歴史書には載っていない、街の裏まで掘り下げた内容を」と企画し、本町・城北地区を紹介した第1集を昨年7月に発刊。毎年1冊、全6巻を予定している。

第2集で取り上げたのは中之島、宮北、大新、新南、広瀬、芦原の6地区で、大字の地名については由来や歴史の概略を記した。今回も、さまざまな業種の企業や店舗、娯楽施設、商業施設などが数多く登場し、創業や移転、廃業などの変遷の歴史が記されている。

公共施設や規模の大きい企業などで詳しい資料が残っている場合もある一方、個人経営の小規模店舗などはほぼ資料がなく、会員の木野十三さんは「創業がいつなのかも分からない店も多い。忘れられていってしまうので、聞き取って残していくことは大事」と話す。

昭和10年ごろの紡績工場の一覧など、和歌山を支えた地場産業の歴史を知る資料も掲載されている他、黒潮国体が開かれた同46年ごろにあったボウリング場の一覧をはじめ、ビリヤード場、パチンコ店のリストなどを通して、地域の娯楽の盛衰も分かる。

主に飲食店の聞き取りを担当した会員の宇和千夏さんは「時代の変化に適応しながらも変わらず貫いてきた精神など、話を聞くと一人ひとりに歴史がある。全部がドラマになりそうな内容で、話を聞くのが楽しかった」と振り返る。

巻頭のカラーページや本文中には、第1集を超える数の古写真を収録し、表紙には、「東和歌山駅」と呼ばれていた時代の和歌山駅のモノクロ写真を選んだ。

前書きは尾花正啓市長が執筆。第1集に続き、地元企業の経営者や店舗オーナー、研究者ら多彩な13人が市内の思い出の場所や店、記憶などをつづったコラムも掲載している。

大江代表は「昔の人には読んで懐かしく感じてもらい、若い人には、和歌山はすごかったと知ってもらい、頑張ろうと思ってもらえたらうれしい」と話し、さらに「この本は完成品ではない。これを元に中学生でも高校生でも、さらに調べてもらったらいい。もっと和歌山に関わってほしい」と期待を語った。

B5判、382㌻。定価2480円。県内の主要書店などで取り扱う。問い合わせは紀州文化の会(℡090・1222・6495)。

笑顔の紀州文化の会の皆さん

笑顔の紀州文化の会の皆さん