水害から地域守る 消防団と防災会ら訓練
和歌山県内で発生した線状降水帯による記録的な大雨から1年となった2日、和歌山市は加太の県消防学校で、市消防団と地区防災会が連携した初の実践型水防訓練を行った。市消防団員の他、松江・西脇・加太地区防災会、市危機管理局、市消防局の職員ら計約150人が参加。水害発生時に迅速で効果的な活動ができるよう救命ボートの取り扱いや土のうの積み方など、水防活動の技術や知識を学び、連携を深めた。
昨年の大雨では市内の和田川と亀の川が氾濫し、住宅が浸水するなど甚大な被害をもたらした。水防訓練は市が梅雨の時期に毎年行ってきたが、昨年の被害を受け、消防団員だけでなく地区の防災会とも連携を図ろうと初めて共同で実施した。
開会式で大浦啓市危機管理局長は「水害には日頃からの備えが重要。きょうは地域が主体となった水防活動を実践につなげていただきたい」とあいさつ。
訓練は3チームに分かれて実施。水害時に水の浸入を防ぐために素早く土のうを設置する訓練では、舗装された堤防上面など、くいが打ち込めない場所でも有効とされる、積み土のう工法を習得。
市消防局職員は「袋に入れる土は6割程度を目安とし、量の違う土のうを積み上げると、大きさや高さが合わず止水効果が低くなる」と説明。参加者は「重いから大変や」と言いながら、力を合わせ袋に砂を入れ運んだ。
河川が氾濫し家屋の床上まで浸水した場合に、建物に取り残された要救助者を救出する訓練では、ボートでのオール操作を学び、対岸まで移動。思うように前に進めず苦戦する姿が見られた。
発生現場で家屋倒壊の状況、要救助者の有無を把握し、優先順位を決めることにつなげるワークサイトトリアージ訓練も行った。
訓練を終え、田中孝明北消防署長は「洪水や水害への備えを一層強化することができた。皆さんの連携はいざという時大きな力を発揮する。今回の訓練を各地域に持ち帰って共有し、地域が一丸となって防災、現在につなげていただきたいと講評。
松江地区防災会の川口英明さんは「やってみないと分からないことが多かった。いざというときのために役に立った」、西脇地区防災会の赤羽静代さんは「力がないので、土のうは運べなくても袋の結び方は覚えた。参加して良かった」と話した。
貴志分団の丸山勝久団長は「入団して21年になるが、訓練することで毎回、気付きがある。普段から積み重ね、有事に備えたい」と気を引き締めていた。