小児がん医療に光照らす 県内で初の啓発イベント
9月の世界小児がん啓発月間に合わせ、患者や家族、医療従事者を応援するイベントが8日、和歌山市の和歌山城ホールで開かれた。県内での開催は初めて。約100人が参加し、がんとともに生きる子どもたちへの理解を深めた。
国際小児がん学会が全世界で推進している「ゴールド・セプテンバー・キャンペーン」は、9月に各地の名所やシンボルをゴールドにライトアップしたり、ゴールドのリボンを掲げたりすることで支援を表明。日本では、2021年からキャンペーンに参加。東京ではスカイツリー、大阪では大阪城をゴールドカラーにし、その動きは全国に広がっている。和歌山市では病気や障害の有無にかかわらず、誰もが豊かに生きることができる風とおしの良い地域を自分たちの手でつくろうと活動する和歌山親子のつどい実行委員会が主催。
7~10日の3日間、和歌山城ホールがゴールドにライトアップされた他、啓発イベントとして「世界小児がん啓発キャンペーンSmile Action in和歌山~子どもたちに必要な医療や研究に光を!~」を開いた。 県立医大小児医療センターの神波信次医師が小児がん医療の現状について講演。日本の小児がんの発生率は年間2500人で、最も多い子どもの病死原因だとし、発生原因が分かっているものはほとんどなく症状が出にくいため、早期発見が難しいという。
小児がんを経験した家族がその体験について話し、2歳で次女が脳腫瘍になった同市の片山美織さん(40)は「心が真っ暗だったのを救ってくれたのは苦しい治療でも前向きな娘の笑顔だった」と振り返り、「私は話を聞いてくれる先生と出会えた。いま闘病中の家族は先生に自分の思いや、もやもやを訴えてしっかり理解した上で治療をしてほしい」と伝えた。
子どもの障害や病気について理解を深めてほしいと活動する人形劇チーム「オレンジキッズ」は、小児白血病啓発の物語「だいじょうぶ、マイちゃん」を上演した。
同市の岡崎由香さん(39)は「子どもが3人いて他人事ではないと思って参加した。知らないことがいっぱいあった」、市川悟さん(34)は「8歳と6歳の子どもが人形劇を見て、抗がん剤治療で髪の毛がなくなったマイちゃんが、かつらを取るシーンで驚いていた。病気について知る良い機会になった」と話していた。会場では売り上げを小児がん治療支援に寄付する「レモネードスタンド」もあり、レモネードは完売となっていた。
イベント終了後、参加者はゴールドにライトアップされた和歌山城ホールの下で、スマートフォンの懐中電灯機能を使い、小児がんに向き合っている子どもたちに「希望の光」と「応援メッセージ」を送った。同実行委員会事務局の岡本光代さんは「来年は和歌山城をゴールドに光らせたい」と話した。