車以外の移動手段を考える 高齢者向け運転講習

電動アシスト付き四輪自転車を体験する高齢者
電動アシスト付き四輪自転車を体験する高齢者

高齢者に安全に運転を継続し、運転を終えるタイミングを見極めてもらうことなどを目的にした講習会が20日、和歌山市西の和歌山交通公園で開かれた。電動アシスト自転車や電動車いすなどに試乗する体験会もあり、参加者は自動車以外の移動手段について理解を深めた。

主催は県作業療法士会、県理学療法士協会、和歌山市第2層生活支援体制整備事業、同市地域包括支援センター名草。「地域での移動と生活を考える会」と題して開いた。

近年、高齢者による事故や逆走などのトラブルが絶えず、社会問題となっているが、公共交通の不便さや1人暮らし世帯が増えている現実が自動車への依存を強めている。和歌山県は、全国的に見ても免許返納率は低い。今後さらに運転や移動の問題が深刻化することが見込まれ、こうした状況を改善するために地域住民一人ひとりが「移動すること」について見直す必要があると、公共交通が不便といわれている名草、三田、安原に住む高齢者に声をかけ、5月から全4回にわたり講座を開設。66~88歳の約30人が参加し、運転を長く続けるために加齢に伴う変化、交通安全ヒヤリハットマップの作成と、運転終活として、車に代わる移動手段などを学んできた。

最終回となるこの日は、車を使わずに移動したノーマイカーデーの体験報告会を実施。「近所のスーパーに自転車で行ってみたら、車がなくても生活できることが分かり自信がついた」、「買い物は荷物があるから車じゃないと無理だけど、郵便局などは自転車で行くなど使い分けていきたい」、「普段から自転車に乗っていないとバランスが取れずフラフラする。車ばかりだと体が衰えるから、歩いたり自転車に乗らないといけないと思った」など、さまざまな意見が出た。

車に代わる移動手段として、電動アシスト付きの三輪と四輪の自転車、電動車いすの試乗体験もあった。

初めて電動車いすに乗った女性(72)は「体が思うように動かなくなったら便利かもしれない。でもできる限り車に乗りたい」と話した。

全種類を体験した男性(76)は「四輪車はスピードが出にくい。買い物と病院にさえ行ければいいので今は自転車を利用したい」、別の男性(79)は「四輪車は楽だけど、今甘えると体が弱ってしまわないか心配。自転車に乗れるうちは頑張りたい」と意欲を見せていた。

県作業療法士会の鍵野将平理事は「運転をやめると認知機能が低下するなどマイナスな点もある。安易に運転をやめるべきではないが、衰えを自覚した上で運転してほしい」とし、「免許返納後の生活を考えたことのない人がほとんどだったが、それをイメージしておくと安全運転につながると思う。両方組み合わせることが重要」と話していた。