有馬の「金泉」と市内の温泉の共通項
早いもので10月も下旬に。ようやく酷暑の夏が過ぎ、少しずつ秋を感じる、きょうこの頃である。この季節になると温泉に入るのが気持ち良くなってくる。和歌山県内では、日本三古泉として名高い「白浜温泉」や日本三大美人の湯として知られる「龍神温泉」をはじめ、同じ県内に居ながらにしてさまざまな泉質を楽しめる魅力がある。
和歌山市内では中心市街地で温泉を楽しめる温浴施設をはじめ、複数の宿泊施設がある。なかでも、茶褐色をした特徴のある温泉は、まるで有馬温泉の「金泉」のよう。神戸市在住の筆者にとって、有馬は身近な存在。今週は、金泉と和歌山市内の温泉の共通項を紹介したい。
金泉は湧き出した時点では一般的な温泉と同様に無色透明。湯の中に多量の鉄分を含むため、空気に触れることで水酸化鉄となり茶褐色に変色する。温泉の元は約600万年前の太平洋の海水。地殻変動によりプレートと共に地中深くに潜り込み、長い歳月をかけて鉄分を携えていく。同時に塩分濃度が海水の1・5倍程度となる。全国に約3万箇所ある温泉のうち、有馬のように「鉄泉」に分類されるのは約1%で珍しい存在となっている。
公表されている温泉分析表によれば、金泉は「含鉄、ナトリウム、塩化物強塩温泉」とされる。一方、和歌山市内の温泉の泉質は「含鉄・ナトリウム、塩化物・炭酸水素塩強温泉」あるいは「含二酸化炭素、鉄、カルシウム、マグネシウム、塩化物温泉」などとされ、いずれも、鉄が含有することが分かる。それ故に金泉と同様に茶褐色となる。
各成分の含有量に違いはあれ、鉄分が豊富に含まれることで色を変える珍しい温泉。深まる秋を身近な温泉で楽しんでみては。(次田尚弘/神戸市)