「ハワイアンモンクシール」の保護活動

前号では、幸せを運ぶ守り神としてハワイで大切にされているウミガメ「ホヌ」を保護する法制度を取り上げた。海洋生物の保護対象はホヌに限らない。今週は、ハワイ諸島の固有種で、乱獲により生息数が著しく減少したアザラシ「ハワイアンモンクシール」を保護するユニークな取り組みを紹介したい。
ハワイアンモンクシールは体長が2㍍以上、体重が150㌔以上のアザラシ。主に魚類、甲殻類、軟体動物を食べる。19世紀、脂の採取を目的に乱獲されたことで著しく生息数を減らしたことをきっかけに、時の大統領であるルーズベルトが法律を設け、保護する法律が成立。以降、保護活動が盛んになり、現在は1400頭ほどという。
ワイキキビーチにも現れることで知られ、砂浜で日なたぼっこをする姿は愛くるしい。ホヌと同様に一定距離を保つことが法律で定められ、50㌳(約15㍍)以内に近づくと罰せられることがある。姿を見つけると地元の保護団体の職員が駆け付け、看板を立て距離を保つよう促すなど、希少な海洋生物を守る動きが定着している。
ワイキキビーチ近くにあるキャラクターをあしらった土産品を販売する店で、ハワイアンモンクシールの人形を見つけた。愛くるしい表情に貫録のある体つき、そこにアロハシャツをイメージさせる生地で作られたもの。収益の一部が保護活動に役立てられるという。
購入することで地域の環境保護に貢献でき、旅行者が自国に持ち帰り誰かにプレゼントすれば環境教育の一環になる。顔を見るたびに環境への意識の高まりも期待できる。旅行者が訪れた地域に貢献し、大切にされている思いを伝播させていく。ハワイアンモンクシールの保護活動から、レスポンシブル・ツーリズムを推進する意義を感じた。(次田尚弘/ホノルル)