病受け止め挑戦続ける 山下さん美容サロン開業

美容サロンを開業した山下さん(本人提供)
美容サロンを開業した山下さん(本人提供)

和歌山市中之島の飲食店「食楽Charll(ちゃーる)」のオーナーシェフ、山下真莉絵さん(39)が3月10日、黒田に美容サロンをオープンした。山下さんはがん闘病中だが、「自分で気持ちをコントロールして少しでも明るい方を見て、やりたいことに挑戦していきたい。病気で気落ちする人たちに伝えたい」と話している。

山下さんの子宮体がんが分かったのは2022年10月。ステージ4Bと診断され、山下さんは「頭が真っ白になり絶望した」と話す。落ち込む日が続いたが、「診断を受ける前日と後とでは何も変わらない。病気を受け止め、やりたいことを一つずつ形にしながら、前と変わらず豊かな人生を送りたい」と覚悟を決めた。

診断を受け、体調不良や抗がん剤治療で飲食店を休業した期間もあったが、その間も「後悔したくない」と、カレーやどんぶり料理限定で単発のランチ営業をし、2日間で200食を提供したこともある。精力的に店舗改装もした。

24年12月に再発が分かったが、山下さんは「最初の判明で再発は十分覚悟していた。がんという病気について早い時期に受け止めができたので、大きな動揺はなかった」と話し、飲食店を続けた。

気がかりなのは、日々支えてくれる店のスタッフのこと。自分がいなくてもスタッフが生活できるようにと、勤務時間など希望を聞き、初発のがん発覚後間もなく、サロンの起業を決めた。時折、飲食店を休んでサロンの場所探しやスタッフの研修、周知などに専念。がんの再発で準備が滞った時もあったが、オーナーの山下さんの下、6人のスタッフで念願のサロン「Bebiskin(ベビスキン)」のオープンに至った。

山下さんは広報や経営戦略も担当する。サロンでは夜にヨガ教室も開き、百貨店のフェアに出展するなど意欲的に運営している。

山下さんは、病気のことで気落ちしたり、気分が乱れたりする状態から平常心に戻すことを「中心に戻す」という言葉で表現する。「当然日々落ち込むこともありますが『中心に戻す』ことを心がけています。病気を受け入れるには、人それぞれの時間と努力が要りますが、自分を責めずに、病の受け入れが少しでも早くできると、新たな生き方が見つかりやすいかな」と話す。

食などの生活習慣を強く制限するとストレスになると知り、過剰な制限をやめた。「こだわる気持ち」を手放したことで生きやすくなったといい、「暗から明に目を移すことで、気持ちの持ち方も変わる。周りに助けてもらいながら好きなことをさせてもらっています」と、体調が良いときは、友人らと川など大好きな自然にふれて過ごす時間を大切にしている。

現在、飲む抗がん剤で治療しながら、サロンの準備で休業中だった飲食店を、自分のペースに合わせて営業している。サロン飲食店の開店情報など詳細はリンク先から。