六代目乙姫に岸部さん 紀三井寺の千日詣

龍宮乙姫龍灯献上行脚に出演する(左から)中嶋さん、岸部さん、角倉さん、木脇さん
龍宮乙姫龍灯献上行脚に出演する(左から)中嶋さん、岸部さん、角倉さん、木脇さん

龍宮の乙姫が龍灯をささげて来山するといわれる紀三井寺(和歌山市毛見)の伝説を再現する「龍宮乙姫龍灯献上行脚」が8月9日午後8時から行われる。同寺で17日、オーディションで六代目乙姫役に選ばれた県立和歌山商業高校1年の岸部杏さん(15)=同市=と、乙姫と共に脚行する女官役のお披露目があり、岸部さんらは本堂で祈祷(きとう)を受け、大役の成功に向けて決意を新たにした。

紀三井寺では毎年8月9日、一日の参詣で千日分の功徳が得られるという「千日詣」が行われている。1255年前の奈良時代、唐から日本に渡り、紀三井寺を開いた為光上人が大般若経を写経した際、乙姫が現れて観音霊場の建立を喜び、毎年の同日に「龍宮から海の中でも消えない龍灯を献上しに訪れる」と告げたと伝えられている。

この伝説をより広く知ってもらい、地域活性化につなげようと、2017年から開催。コロナ禍の20~22年の中止があり、今回で6回目。当日は、華やかな衣装をまとった乙姫一行が龍灯を携え、夜の境内を練り歩く。

オーディションには県内中心に21人の応募があった。女官役には、いずれも市内に住む和歌山信愛短期大学1年の中嶋桃花さん(23)、東京医療保健大学2年の木脇陽菜さん(19)、和歌山信愛大学2年の角倉愛菜さん(19)、専門学校生の井畑和嘉奈さん(20)が決まった。一行を迎える巫女役は、会社員の酒井梓羽さん(29)=同市=、高校1年生の山口歩美さん(15)=有田市=が選ばれた。

岸部さんは昨年の五代目乙姫を見て、所作などの美しさに魅了され、「私もこんなふうになりたい」と応募を決意。「去年の乙姫が本当に全部がすごかったので、それを超えたい。参詣者に『見に来て良かった』と思ってもらえるような最高の乙姫を演じたい」と笑顔で決意。

中嶋さんは「自分らしさを大切にしながらも、しっかりと乙姫をサポートしたい」、木脇さんは「本番に向けてたくさん練習を重ねて、『選んで良かった』と思ってもらえるように頑張りたい」、角倉さんは「見に来てくれた人たちに紀三井寺の歴史をしっかりと伝えたい」とそれぞれ意気込んでいた。

紀三井寺の前田泰道貫主は「千日詣では素晴らしいパフォーマンスをご披露いただいて、千日分の功徳をいただけるという意味を、大勢の参詣者の皆さまにお届けいただけると期待している」とエールを送った。

行脚の振り付け、演出、衣装、舞踊指導は和歌山オリエンタルダンス協会代表理事で、初代乙姫を演じたエヴァ香陽さんが務める。エヴァさんはこれまでも舞踊指導を担当しており、「皆さん稽古を重ねていくと、いい目になってオーラも出てくる」と言う。「右も左も分からない中で一生懸命に努力して、大勢の前で発表することは一生の宝物になると思うので、頑張ってほしい」と期待を寄せている。