過去最多の7人乱立 参院選和歌山選挙区
第27回参院選が3日、公示された。和歌山選挙区(改選数1)は、いずれも新人で過去最多の7陣営が立候補を届け出ている(午後3時現在)。衆院は少数与党の現状であり、今回の参院選には事実上の政権選択選挙との見方もある。勝敗の鍵を握るとされる全国32の「1人区」の一つ、和歌山の戦いが注目されている。
和歌山選挙区に立候補したのは届け出順に、共産党新人で党県副委員長の前久候補(69)、自民党新人で元衆院議員秘書の二階伸康候補(47)、無所属新人で前有田市長の望月良男候補(53)、日本維新の会新人で元県議の浦平美博候補(53)、無所属新人で不動産会社経営の末吉亜矢候補(54)、NHK党新人で元総務省職員の本間奈々候補(56)、参政党新人で訪問看護会社役員の林元政子候補(51)。
立候補の受け付けは和歌山市の県庁北別館2階で午前8時半から始まり、各候補は届け出を済ませると、市内で出陣式を行い、有権者への第一声を放った。
全国的には、物価高騰対策などを争点に与野党が激しく戦うが、和歌山は昨秋の衆院選和歌山2区に続く「保守分裂」となり、自民支持層内でも厳しい戦いが繰り広げられる。維新との調整で立憲民主が候補者を取り下げたため、野党支持層の票の行方も不透明となっている。
2日現在の県内の選挙人名簿登録者数は77万1464人(男36万1563人、女40万9901人)。本紙エリア内各市町は、和歌山市29万9788人、海南市4万585人、紀の川市5万573人、岩出市4万5055人、紀美野町6923人。
上から下に届出順 【名鑑の見方】名前(敬称略)投票日現在の年齢、党派と現職・新人の別=推薦(自は自由民主党、維は日本維新の会、共は日本共産党、参は参政党、NはNHK党、無は無所属)。①主な経歴②最終学歴③住所 |

前 久 候補(69)
共新①党県副委員長②南九州大園芸卒③和歌山市
消費税5%に引き下げを
前候補は和歌山城一の橋前で出発式を行った。物価高騰について「生活ができない、商売が成り立たないという悲痛な声が寄せられている」と訴え、「今回の参院選は、こうした声にどう応えるのかが大きな争点だ」と強調。最も効果的な対策として消費税減税を挙げ、「全ての品目の税率を5%に引き下げれば1世帯あたり年平均12万円の負担軽減となる。食料品だけを非課税にしても6万円にとどまり、2倍の効果が見込まれる。引き下げを実現したい」と力を込めた。財源は「現状、優遇されている大企業や富裕層に応分の負担を求めれば十分確保できる」と主張した。
最低賃金に関して、和歌山と大阪で134円の差があり、大阪に出稼ぎに行く人が多い現状を指摘。「全国一律で1500円にすべきだ」と訴えた。さらに医療や介護分野にも言及。「命を守る医療や介護にこそ予算を投じる政治に転換しなければならない」とし、防衛費の増額は「暮らしを壊す大軍拡だ。憲法を守り、平和外交にこそ力を注ぐべきだ」と懸念を示した。

二階 伸康 候補(47)
自新①元衆院議員秘書、元航空会社員②青山学院大法卒③田辺市
地方の時代切り開く
二階陣営は和歌山市美園町のJR和歌山駅前で出陣式を行い、県内の首長や議会議員、支持者ら約500人(主催者発表)が参集。自民党県連の石田真敏会長が「将来の日本に責任を持つ。そういう政策を、二階伸康を先頭に頑張る」とあいさつ。鶴保庸介参議、宮﨑泉知事、尾花正啓市長、岡本章県町村会長も共闘を誓った。
二階候補は高校時代のバスケ部仲間が寄せ書きしたお立ち台の上でマイクを手にし「私は昨年の衆院選で落選したが、ふるさとのためにどうしてもなすべきことがあって、もう一度挑戦させていただいている。東京の一極集中が止まらず地方の人口減少が止まらない。政治がこれを放置してはいけない。今こそ地方の声を国に反映させ、本当の意味での地方の時代を切り開かなければならない」と力強く第一声。地域経済の活性化や1次産業の振興、防災対策などに意欲をみせ、「政治は実行。皆さんの不安を正面から受け止め即座に実行したい」と声を張り上げた。この日は紀北の各市町で出陣式を行った。

望月 良男 候補(53)
無新①元有田市長、元有田市議②大阪市立大修士修了③有田市
希望ある政治に転換
望月陣営は午前9時から、南海和歌山市駅前で出陣式。後援会長の神出政巳海南市長は、届け出順3番について、望月候補が元高校球児であることから、「〝ミスター〟長嶋(茂雄さん)がわれわれを見守ってくれているのではないか」と会場を沸かせた。
友人でパティシエの鎧塚俊彦さんは「望月良男は(有田市長として)16年、結果を出している。国をよくするには必ず望月の力が必要だ」と支援を訴えた。谷洋一県議も応援演説し、世耕弘成衆院議員が祝電を寄せた。
望月候補は「今の日本、和歌山に足りないのは希望だ。政治には希望がなくてはいけない」とし、市長時代に取り組んだ産婦人科クリニック誘致などを例に、地域課題解決のために財源をつくるまでがセットで政治の役割だと強調。GX産業の推進などの政策を掲げ、「私たちが誇れる産業で利益を上げてもらい、所得を上げ、財源を生んでいく」と述べ、「(投票日の)20日が日本の政治が希望に変わっていく節目になるために、懸命に走り回る」と誓った。

浦平 美博 候補(53)
維新①元県議、元高校教員②国士舘大体育卒③和歌山市
社会保険料の負担下げる
浦平候補は和歌山市役所前で出陣式を行い、県総支部代表の東徹衆院議員は「県議の任期を2年残していたが、強い覚悟で立候補した。日本の政治を和歌山から変えていくことができる」、副代表の林佑美衆院議員は「市議、県議の経験を持ち、皆さんの思いを国政へ届けられる即戦力」と紹介。
浦平候補は「社会保険料の引き下げで暮らしを変える」と強調。自身の会社経営の経験から「年収350万円の単身世帯で、年間50万円の社会保険料負担があるのに、所得税は7万円。この比率は正しいのか」と疑問を投げかけ、「しんどいと思いながらも、なぜなのか考えることを怠っていた。これを変えるのは政治しかない」と訴えた。
浦平候補は「選挙の前だけきれいごとを言い、当選すればあぐらをかく。その結果、国民は政治を諦めてしまった」とし、「だから今こそ、国民と本気で向き合わなければならない」と主張。「本気で和歌山の政治の勢力図を変え、未来に向けた和歌山、そして日本を構築したい」と決意した。

末吉 亜矢 候補(54)
無新①不動産会社経営②帝塚山学院大文卒③和歌山市
若者の県外流出を抑制
末吉候補は和歌山市新八百屋丁の選挙事務所で出陣式を行い、約60人の支援者が参集。中谷哲久応援会世話人が「舞姫のように大きく羽ばたいてほしい」とあいさつ。
末吉候補は、仕事にしてきた不動産についての知識が強みだとし、「和歌山は若い世代がどんどん県外に出てしまう状況があり、どうにかして引き止めたいが、就職先や進学先が問題となって個人ではどうすることもできなかった。人口の流出を止めなければまち自体がなくなるところがたくさんある」と訴えた。
若者の定着にまず力を入れ、起業家の育成を図り、空き家対策や第1次産業の振興、高齢者福祉の充実、子育て支援、女性の活躍などを重点政策に挙げた。
「和歌山には今何が足りないか、何があればもっと良くなるかをずっと自問自答しながら、いつかこの経験を国政に生かしたいと思って活動してきた」と振り返り、「私が戦う相手は他の候補者だけではない。若者のため、日本のため、これまでの経験全てを生かして頑張ります」と誓った。

本間 奈々 候補(56)
N新①政治団体代表、元総務省職員②早稲田大法卒③札幌市
自民王国和歌山をつぶす
本間候補は和歌山城公園内護国神社での必勝祈願の後、市役所前で第一声を放った。
「今、自民党が真っ二つに割れ、チャンスが巡ってきた。和歌山県民に新しい選択の機会が訪れようとしている。二階王国で戦い続けてきた本間奈々にとっては感無量」と、自身の出発点である自民党王国和歌山崩壊のチャンス到来を強調した。
米の価格高騰に関して自民党の農業政策を批判し、農家の所得を補償し、減反政策をやめさせる政策を提案。物価高で現役世代、年金生活の高齢者が苦しんでいる現状も訴え、「2万円配るくらいなら、最初からとるな。NHK党は消費税を廃止、インボイスもやめさせる。社会保険料を含めた国民負担率も下げさせることを実現する」と約束。中国問題、移民問題にも真正面から取り組むとし、「親中、媚中の自民党の政治家を倒す。そして17日間、NHKをぶっ壊すという言葉を和歌山にとどろかせる。既存政党を選ぶのではなく、本間奈々、N党を押し上げてください」と声を張り上げた。

林元 政子 候補(51)
参新①訪問看護会社役員②和歌山看護専門学校卒③和歌山市
強い経済を取り戻す
林元候補は和歌山市小松原の事務所で第一声。夫の林元光広市議が「きょうから17日間、県民の皆さんにいかに参政党、林元政子を知っていただけるかにかかっている。和歌山の明日のため、日本の未来のために活動していきたい」とあいさつ。続いて橋本市議の岡本喜好議員と牛田ゆか岩出市議があいさつした。
林元候補は「消費税率を上げるたびに法人税の税率が下げられ、リーマンショックを超える経済の停滞が起きた。経済が失速したら赤字企業、倒産企業が増え、法人税、所得税の税収が減る」と強調。「消費税がなかった30年前の強い経済状態を取り戻すことにより、和歌山のような地方、日本の経済は爆上がりすると考える。中小零細企業に利益を残すことは地元の企業やお店に富が循環する」と主張した。
その他、子育て政策のお金の使い方や、第1次産業への対応などを訴え「日本人の誇りを取り戻す。日本人ファーストな政治を取り戻す」と呼びかけた。