手話や筆談できます 目印のバッジ作成

聴覚障害のある人もそうでない人も気軽に声を掛け、互いに助け合える社会を目指して、和歌山市の看護師、田中匡子さん(60)が代表を務める有志グループ「糸」は、聴覚障害のある人に手話や筆談での対応を意思表示する「手話バッジ」を作成し、販売。昨年3月から始めた取り組みは着実な広がりを見せている。

田中さんは、聴覚障害のある患者との出会いをきっかけに、2017年から手話の勉強を始めた。昨年3月、田中さんの乗る電車がトラブルに遭い、車内アナウンスを聞いて別の電車に乗り換えた際、もし車内に聴覚障害者がいたら、無事に帰宅できていただろうかと不安に感じたという。当事者が何か目印になるものを身に着けていれば手伝いができるのではと考え、手話バッジを思い付いた。

友人の藤本佐知子さん(52)協力のもと、すぐに試作し、岩出市根来の手話カフェwithyouで販売を開始。元々は聴覚障害者が着けるバッジとして考えていたが、さまざまな意見を受け、誰もが着けられるバッジへと変更。手話の手とハートを描いたバッジの他、手話を勉強中の人向けの若葉マークや、筆談OKの文字入りと三つのデザインがある。

同バッジは同年7月、県聴覚障害者協会から承認を受け、現在同市以外にも、紀の川市や海南市、すさみ町のカフェなど、17店舗で販売されている。収益の一部は、県で初めて2018年に開設された聴覚障害者対応老人ホーム「きのくにの手」に、これまで4回寄付された。

田中さんは「バッジを作り始めた時に『どうせ着けても助けてくれない』と言っていた聴覚障害者の方が、これほど多くの人が手話バッジを手に取ってくれていることを伝えたら、すごく感激してくれてうれしかった」と笑顔で話し、「ことしの秋には全国障害者芸術・文化祭わかやま大会もあるので、一人でも多くの方に着けてもらえれば」と期待を込める。

大きさは2種類。大400円、小300円。問い合わせはメールで田中さん(yuzu.ten4381@gmail.com)。

手話バッジを手に田中さん㊨と藤本さん

手話バッジを手に田中さん㊨と藤本さん