新宮市の大前屋旅館 国の登録有形文化財に

国の文化審議会(佐藤信会長)は16日、和歌山県新宮市三輪崎の大前屋旅館を国登録有形文化財に新規登録するよう文部科学大臣に答申した。今回を含めて県内の国登録有形文化財は109カ所、301件となる。

大前屋旅館は、三輪崎漁港の近くにある近代和風の旅館建築。明治36年(1903)に建てられ、平成元年(1989)ごろまでは旅館を営み、その後は住宅として使用されてきた。面する通り沿いには、同じく登録有形文化財(建造物)の三輪崎青年会館がある。

建物は木造2階建て、入母屋造り、瓦ぶきで、北面して建っている。1階には出格子を構え、2階には出桁(だしげた)造りの軒や高欄付きの連続する腰高窓を設け、旅館らしい開放的な造りとなっている。

内部は両階とも中廊下を設け、その南北に各部屋が並ぶ。2階にある7室の客室は4畳半から8畳の和室で、北側の通りや南側の海への眺望に配慮した造りとなっている。昭和48年(1973)には内部が一部改修され、南側には居住部が増築されたが、建具や外観などは旧来の姿を残している。

かつては目抜き通りだった道に面したこの建物は、現在も地域に親しまれ、通り沿いの歴史的景観の形成に寄与しているとして、評価されている。

 

大前屋旅館の北面外観(新宮市教育委員会提供)