有力者の墓か 岩橋千塚で新たな古墳4基
全国有数の群集墳「岩橋千塚古墳群」(和歌山市岩橋)で、金銅装馬具の副葬品が埋葬された有力者のものと見られる1基を含む4基の古墳が新たに発掘調査で見つかった。発掘を担当した県立紀伊風土記の丘の田中元浩学芸員(41)は、「馬具の出土は例が少なく、有力者の古墳形成を考えていく上で貴重な発見」と話している。
岩橋千塚古墳群は、4世紀末ごろから7世紀中ごろにかけて造られた総数900基の古墳からなる国内最大級の群集墳。一部は国の特別史跡に指定されている。
新たに見つかった古墳は特別史跡の指定範囲外で、県立紀伊風土記の丘資料館から南西150㍍先にある万葉植物園の北側。2028年度開館予定の県立考古民俗博物館(仮称)建設に伴う事前調査の発掘で見つかった。
中でも馬具が出土した円墳は推定直径16㍍~20㍍。6世紀中ごろの築造とみられ、直径10㍍未満の円墳がほとんどの岩橋千塚古墳群では規模が大きいという。円墳は紀州の青石とも呼ばれる結晶片岩(けっしょうへんがん)を積んだ横穴式石室で、遺体を納める玄室からは、銀の耳飾りや刀装具の他、馬の尻付近で革ひもを交差して留める「雲珠(うず)」や、鞍に革ひもを通す「鞖(しおで)金具」など鉄に金銅を張った馬具一式が見つかった。馬は当時日本では数が少なく、岩橋千塚古墳群でも馬具の副葬品の出土は30例ほど。葬られた人の身分を示すとみられ、円墳の大きさととともに有力者の古墳の一つと考えられるという。
3月26日に開かれた現地説明会には66人が参加。神奈川や福岡から来た古墳ファンもおり、馬具が見つかった玄室や石室の石積みに興味津々の様子だった。
同市の岩室真一さん(48)は「石室の内部がよく見え、仕組みが分かった。昔の人はすごい」と感心していた。新たに見つかった古墳は現地での保存を検討していく予定だという。