高齢者こそeスポーツを 初の全国大会開催
若者を中心に人気の高いコンピューターゲームを使ったスポーツ競技「eスポーツ」の60歳以上のシニアを対象にした全国大会が初めて開かれ、和歌山県からも予選を勝ち抜いた70代女性が代表として出場した。スポーツや格闘系などの種目があるeスポーツだが、今回の大会では「頭だけでなく体も使えたので楽しかった」と出場選手からは好評だった。頭も体も使うeスポーツは、認知症の予防にも最適と言えそうだ。
全国大会は日本eスポーツ連合(東京)が主催し、オンラインで先月27日にあった。県予選は同15~18日の4日間で計20人の男女が出場。曲に合わせて太鼓をたたくタイミングや強弱を競うゲーム「太鼓の達人」に挑んだ。
県予選は選んだ2曲の合計点で争われ、トップの成績を収めて県代表になったのは和歌山市の主婦西丸加代子さん(77)。トーナメント戦の全国大会は1曲のみの対戦で、西丸さんが予選で選んだ2曲を含む計3曲から対戦ごとにランダムに決まる。初戦は秋田代表の男性と対戦。幸い予選でも挑んだ「おどるポンポコリン」だったが、西丸さんは「全国大会なるものが初めての体験。緊張で出だしがずれてしまった」。
画面の指示に従って両手に持ったばちをたたかなければいけない場面で、ずれの修正がうまくできないまま終了。県予選より10万点以上低い得点で敗れた。予選での成績であれば通過できたが、西丸さんは「参加できただけ十分」と笑って振り返った。
「体も頭も使って楽しかった」以上に西丸さんが感じたのは「ドキドキ感」だったという。夫に先立たれて5年。「家にいるとテレビばかり。(eスポーツは)普段できない経験ができて楽しい」とも語った。
今回の県予選を企画したのは、高齢者デイサービスを運営する和歌山市新八百屋丁の大新メディカル合同会社。阪上英之代表(59)は「狙い通りの成果を得られた」と胸を張る。
会社が運営する福祉施設では1年前から、レクリエーション活動の一環として、eスポーツを取り入れている。施設内に機材を備え、利用者はeスポーツに興じることができる。県代表の西丸さんも練習に励んだ一人だった。
今の高齢者世代は、若い頃に「ゲームなんて…」という風潮で育ったり、テレビゲームにそもそもなじみがなかったりする人も多い。ただ、実際にゲームに触れてもらうと、一生懸命にばちをたたいたり、低得点だと悔しがったりする姿が多く見られたという。阪上代表は「目を輝かせてゲームに興じる利用者もいて、間違いなく『生きがい』になっていると感じた」と強調する。
今回の全国大会「LEGEND CUP」は来年以降も開かれる。阪上代表によると、今回の手応えから県大会は継続し、参加者をさらに増やしていく意向だという。
「マージャンが頭の体操に良いといわれますが、体も同時に動かせるeスポーツこそが高齢者のスポーツに最適ではないでしょうか」
将来は県代表のシニアと若者代表が世代間対決し、勝利することを最大の目標に掲げている。