IR特別委の混乱の末に 不信渦巻いた県議会

仁坂吉伸和歌山県知事の肝いり政策であるIR誘致は、国への区域整備計画申請に必要な最後のハードルである県議会の議決を目前に、暗礁に直面した。IR対策特別委員会(16人)で19日、県当局に虚偽答弁の疑いがあるとの指摘があり、当初から賛否が割れていた委員らの質疑は、不信感をあらわにした反対派による追及に大きく傾いた。同日までの県議会臨時会の動きを振り返る。

【14日】

開会日。県は区域整備計画を国に申請する議案を提出。仁坂知事は提案理由説明で、IRには県内総生産の約1割に相当する経済波及効果が見込まれ、県の持続的な発展に資すると強調し、議案への賛同を呼び掛けた。

【18日】

午前は本会議で県議6人が質疑。資金調達の確実性などを巡って賛否両論の質問があり、仁坂知事は「現在の計画は国の審査に耐えうると考えている。一刻も早くIRを実現すべく国にチャレンジさせていただきたい」と述べる一方、「ここまで育ててきたプロジェクトを県レベルでやめてしまうと、その後のさまざまな投資誘致の際に障害が生じることを恐れる」と、否決によるマイナス効果にも言及した。

午後は、区域整備計画申請の議案について総務委員会と経済警察委員会で審議。いずれも適当と判断された。

総務委では事業運営の能力、体制、地域経済への効果などが判断の対象となり、IR事業者「クレアベストニームベンチャーズ」のマリオ・ホー代表取締役もオンラインで出席。すでに必要な資金を超過する出資、融資が見込まれているとの見解を示した。

【19日】

午前10時にIR対策特別委員会が開会。質疑の前に藤山将材委員長が、3月17日の同特別委での質問を巡り、県が国に照会して回答した内容が虚偽ではないかと指摘した。藤山委員長が観光庁に4月18日に問い合わせ、19日朝に受けた回答は、県から照会を受けた事実はないとの内容だった。

県は、国の担当者に電話で照会した内容だと説明し、「虚偽」との指摘を強く否定したが、委員の多数は、事実関係を確認するためとして地方自治法第100条に基づく調査特別委員会「百条委員会」の設置を求め、賛成多数で決議。翌日には取り下げたが、しこりを残した。

区域整備計画申請についての質疑も行われたが、藤山委員長を除く15人の採決は賛成5、反対10で否決。休憩を挟んで8時間近くに及んだ特別委は県当局にとって無念の幕切れとなった。

藤山委員長は「こういう結果は残念だが、各委員の判断を尊重したい。不信感が最後まで払拭(ふっしょく)できず、百条委員会設置(の決議)につながったと思う」と話した。

 

IR対策特別委員会で答弁する仁坂知事㊥、オンライン出席したホー氏㊧