補助人工心臓インペラ 医大が治療を開始

急性心筋梗塞や心筋炎などにより全身に血液を送る心臓のポンプ機能が低下する「心原性ショック」の治療で、和歌山県立医科大学は、カテーテルで心臓内に挿入し、血液循環を補助する器具「IMPELLA(インペラ)」を県内で初めて使用したと発表した。患者への負担が小さく、迅速に処置できることから、従来の器具を含めて治療の選択の幅が広がり、患者の回復につながると期待される。

同大医学部内科学第4講座の塩野泰紹講師と高畑昌弘助教、外科学第1講座の本田賢太朗講師が同大で記者会見した。

心原性ショックが起こると、全身に血液を送り出す機能が弱り、血圧の低下、全身の臓器への血流の低下などが現れ、時間が経過するほどに心臓と全身の臓器の不全が進み、やがて死に至る。

重篤な状態になる前に血液循環を助け、心臓機能の回復を図ることが重要であり、インペラは、従来のカテーテル補助具「IABP」よりも機能が強力で、体外に循環回路を装着するECMO(エクモ)に比べて患者への負担が小さく、迅速に使用できる。

インペラは股などから血管を通して心臓内の左心室に挿入し、羽根車が回転することで左心室から大動脈への血流を生み、循環を補助する。弱った心臓にかかる負担が軽減されることで、心臓機能のさらなる悪化を食い止め、回復を早めることにつながる。

日本国内でインペラの使用が可能になったのは2017年9月。17年10月~20年1月の全国の使用例823例のまとめでは、急性心筋梗塞に対しての使用が45%で最も多く、心筋炎が12%、心不全が8%と続く。

インペラによる補助開始から30日までの患者の生存率は、急性心筋梗塞が77・4%、心筋炎が87・5%で、全症例の生存率63・6%を大きく上回る。

県内初となった県立医大の使用例はことし2~4月に内科と外科で各3の計6例。外科では、人工心肺を接続して手術をした後、人工心肺から離脱できる状態になるまで時間がかかった症例で、インペラの挿入による心臓機能の補助の有効性が確認されるなどしたという。

塩野講師は「インペラが加わることで、治療のオプションが広がり、心原性ショックの重篤な患者さんの予後を改善させることができる」と意義を話した。

 

県内初のインペラの使用例を説明する(左から)高畑助教、塩野講師、本田講師