糖分高めで苦みが少ない「紅八朔」
前号では、この時期に食べ頃を迎える、樹上で木成り熟成された「さつき八朔」を取り上げた。さつき八朔と同じく、木成り熟成により通常とは遅い時期に楽しめる八朔がある。今週は「紅八朔(べにはっさく)」を紹介したい。
紅八朔は、1951年に広島県尾道市の農園で発見された八朔の枝替わり品種。発見した農家の名前、農間氏にちなみ「農間紅八朔」という名称が付けられているが、一般的には紅八朔として流通している。
八朔と比べると大きさは300~400㌘と大差はないが、外皮の色は少し赤みがかった印象。皮はやや厚めで、ナイフなどで切り込みを入れてむくのがおすすめ。その名のとおり果肉の色もやや赤く、八朔よりも水分が多い。糖度が高めで、八朔特有の酸味や苦みは控えめ。八朔は苦手だという方でも食べやすい、一味違う八朔を楽しむことができる。
紅八朔には収穫後、酸味を下げてから出荷し2月中旬ごろから4月上旬ごろまで市場に出回るものと、木成りで熟成された後に収穫され5月ごろまで楽しめるものがある。木成りの方が甘味があり、果肉がパサパサになりづらい印象がある。
主な生産地は和歌山県と広島県とされ、広島県では通常の八朔から紅八朔への切り替えが進んでいるという。和歌山県内では八朔自体の生産量が多く、紅八朔の割合が分かる統計資料はないが、紀北から紀南まで、地域が限られることなく栽培されている。
まだまだ希少な品種である紅八朔。ことしの旬は過ぎているが、ぜひ来年の春に食べてみてほしい。
(次田尚弘/和歌山市)