尾花市長3期目 「人」輝くまちへ展望語る

和歌山市をさらに前へ

 

【尾花正啓(おばな・まさひろ)】 1953年4月25日生まれ。県立海南高校、東京大学農学部・工学部卒業。80年に県庁に採用され、道路局長、県土整備部技監、県土整備部長などを歴任し、2014年の和歌山市長選で初当選。22年8月に3期目の当選を果たした。趣味は愛犬くうちゃん(雑種)とのウオーキング。

 

 

尾花市長 3期目の展望

 

和歌山市をさらに前へ――。8月21日の市長選で当選した尾花正啓市長(69)の3期目の市政運営が始まっている。人口流出、まちなかの衰退を止め、市民が安心して幸せに暮らせる魅力あるまちの実現のため、2期8年間でさまざまな改革の種をまいてきた。その成果が芽吹き始め、大きく育てる時期を迎える。尾花市長に、これまでの市政の成果や課題、今後の展望を聞いた。

 

――2期8年の市政運営の成果は。

若者の県外流出、市中心部の空洞化などを何とか止めなければと思い、難問に挑んできました。

職員には「財源がないからできない」ではなく、「できるように工夫する」、「市民の立場に立つ」よう意識改革を進めました。国費の活用を徹底して探し、市単独ではできない事業の財源を確保するとともに、民間の資金や力を呼び込むことで、まちなかへの大学誘致、耐震化と魅力向上を合わせた市民図書館や和歌山城ホールの整備など、にぎわいを生み出す都市空間を整備してきました。

改革で生まれた財源は、小中学校の全ての普通教室への空調整備、こども医療費の無償化の拡充、就学援助の引き上げなどこれまで遅れていた子育て支援や、さらに高齢者・障害者支援等の充実などに割り当て、福祉予算を大幅に増加させました。

人口流出にも歯止めがかかり、子育て世帯の増加により、19年にはついに45年ぶりに転入超過に転じました。

財政再建も進め、就任時に約2000億円あった実質的な借金を、20年までの6年間で約145億円改善しました。

 

――現在、直面している課題は。

コロナ禍で社会・経済情勢は一変しました。物価高騰の生活への影響も非常に厳しく、まずは安心して暮らせる日常を取り戻すことが喫緊の課題です。

高まってきたはずの地方分散の機運とは裏腹に、大企業の組織再編による都市圏への人員集約化が、地方からの人口流出につながる現象もあり、国に対策を求めています。

 

――市長選で訴えた4項目の政策の内容と展望は。

【誰もが安心して暮らせる優しいまち】

新型コロナウイルス感染症対策では、感染者が急増した際に保健所業務を支援するサポートセンターの設置など、先手、先手の取り組みを進めてきました。

25年、40年ごろに顕著となる高齢者に関する課題解決に着手し、専門家の指導による健康体操など、健康長寿、フレイル(要介護の前段階)の予防、対策を行います。

気候変動に対応するため、紀の川の治水、農地防災の国への働き掛けや市内中小河川の治水対策に取り組むとともに、住宅耐震化や空き家対策、要配慮者の避難体制の確保など、地域の防災・減災対策を進めます。

紀の川北部への新浄水場整備、送水管の複線化など水道インフラのリダンダンシー(多重性)を早期に確保し、安定した生活環境の構築に取り組みます。

 

【子どもたちがいきいきと育つまち】

子育て世帯の不安感や経済的な負担をさらに軽減し、子どもたちの確かな学力、たくましく生き抜く力を育む取り組みを充実させます。

高校卒業までのこども医療費無償化に向けシステム改修に着手し、来年度早期の実施を目指します。

コロナ禍の中、児童虐待や不登校が増加しており、支援を必要とする子どもや家庭には、こども総合支援センターを中心に、関係機関と連携して、寄り添い型の支援を進めます。

少人数学級の推進や特別支援教育、相談機能の充実などを図り、温かさのある教育を推進します。

市立中学校の全員給食の早期実施、中学校給食費の無償化、オーガニック給食の導入を進め、子どもたちの健全な心身の育成を図ります。

 

「にぎわいを生み出す都市空間」城前広場

 

 


 

「人」が輝く未来を

 

【ふるさとで学び働けるまち】

専門性が高く、地域に必要な分野の大学や専門学校を引き続き誘致し、地元雇用を促進します。

市内企業に対しては、生産性向上の取り組みに対する支援などを充実させ、一次産業については、担い手となる人材の確保・育成を支援し、ブランド化に向けた付加価値の向上により、販路拡大を後押ししていきます。

観光産業は、地域の人にも喜んで利用いただけるような、魅力ある観光地の整備を行うとともに、市の豊かな自然や歴史・文化を生かした観光パッケージ、集客力のあるキラーコンテンツの形成などを通じて、「稼げる観光」を促進します。

 

「市堀川を中心とした かわまちづくり」京橋親水公園

 

 

【県都として活力にあふれたまち】

豊かな自然に囲まれ、自然と都市がコンパクトにまとまっている地域特性や紀州徳川家の城下町という歴史・文化を生かしたまちづくりをさらに進めます。

まちなかでは、城下町の特徴である水運や水辺を生かし、和歌山城の外堀だった市堀川などを中心とした「かわまちづくり」に取り組みます。

路線バスが廃止された地域を中心に地域バスを拡大し、低価格で通院や買い物、通勤・通学などに利用できるよう、サブスクリプションの導入も含め、既存の鉄道や路線バスなどと結ぶ実証実験を行い、本格運行を目指します。

スポーツ振興、和歌山城ホールを活用した文化・芸術の推進に取り組みます。

 

稼げる観光」道の駅四季の郷公園フードハンターパーク

 

――市民にメッセージを。

これまでの取り組みで整備された都市空間、得られたにぎわい空間のさらなる活用を目指し、市民、行政、企業などの協働を促し、都市環境の質を持続的に育み、まちの成長を市民の皆さまに実感できるようにしていくことが必要だと考えています。

まちの成長の鍵を握るのは「人」です。「人」が輝く明るい未来を必ずや実現し、市民の皆さまと共に「オール和歌山」の力で、近畿の中でもきらり輝く元気な都市を創造し、和歌山市をさらに前へ進めていきます。