県ゆかりの演奏家集う きのくに音楽祭

「きのくに音楽祭2022」の主要公演の幕開けを告げるウェルカム・コンサートが14日、和歌山城ホール(和歌山市七番丁)で開かれた。総監督を務める澤和樹さんをはじめ、国内外で活躍する和歌山ゆかりの音楽家が集結し、弦楽オーケストラの演奏を披露。注目の若きピアニスト・柴田陽(ひかる)さん(14)がソリストを務め、協奏曲デビューを飾るなど、発展が期待される和歌山の音楽文化を内外に示す演奏会となった。

きのくに音楽祭は県内初の本格的な音楽の祭典として19年に誕生。コロナ禍で昨年は中止を余儀なくされ、ことしは2年ぶりの待望の開催。10日のファミリー・コンサートで開幕し、最終日の16日まで集中的に公演が行われる。

今回も、総監督は和歌山市出身のバイオリニストで前東京藝術大学学長の澤さん。ウェルカム・コンサートは、澤さんが指揮するモーツァルトの「弦楽のためのディヴェルティメント」で始まり、祭典の幕開けにふさわしい、華やかで精緻な合奏がホールいっぱいに響いた。

2曲目はモーツァルトのピアノ協奏曲第12番。ソリストの柴田さんは、2歳からタイ、ラオスで暮らし、17年に和歌山へ。和歌山大学付属小・中学校で学びながら同市のピアニスト・宮下直子さんに師事し、現在は兵庫県在住。第5回タディーニ国際音楽コンペティション(イタリア)特別第1位、第1回SIMA CLASSICS国際コンペティション(イギリス)第1位など、国際的な舞台で高い評価を受けている。

柴田さんは、初の協奏曲で集中力の高い落ち着いた演奏を披露。明るく伸びやかな旋律では、輝かしく、疾走感のある心地良い音色を響かせ、繊細に移ろいゆく音楽の多様な表情を巧みに描き分けた。オーケストラとの息もぴったり合った一体感のある音楽に、会場から大きな拍手が送られた。

指導する宮下さんも「落ち着いて、やるべきことをやっていた。安心して聴いていられた」という堂々たる協奏曲デビューで、柴田さんは終演後、「新しい挑戦ができました。プロのオーケストラと協奏曲を弾けて、とても楽しい時間でした」と笑顔。「音楽で人を喜ばせることができる演奏家になりたい」と意欲を話し、和歌山の聴衆に感銘を残した力を、さらに磨いていく。

ウェルカム・コンサートの最後は、ビバルディのバイオリン協奏曲集より「四季」。寺下真理子さん、古久保有亜さん、北島佳奈さん、島田真千子さんの4人のソリストが各季節を弾き分けた。

舞台のスクリーンには、東京藝大学長時代に澤さんが発案し、世界の4人のアニメーターが同曲に合わせて制作した四季それぞれのアニメーションを上映。AI(人工知能)により、生演奏に合わせてアニメが動く画期的なシステムによる〝共演〟となり、聴衆は耳と目の両方で新たな音楽体験を楽しんだ。

モーツァルトのピアノ協奏曲を演奏する柴田さん(中央)

モーツァルトのピアノ協奏曲を演奏する柴田さん(中央)