スポーツワーケーション 和市で実証実験
アウトドアスポーツと「ワーケーション」を組み合わせた新たな働き方「スポーツワーケーション」を推進しようと、和歌山市和歌浦で実証実験が進められている。コロナ禍でテレワークが普及し、職場や居住地を離れた地域での仕事と余暇を組み合わせたワーケーションの取り組みが注目される中、仕事の生産性向上への有効性を検証する。
観光庁の「ワーケーション推進事業」企業と地域によるモデル実証事業を活用。和歌山市と、全国でフィットネススタジオや介護リハビリ施設など100カ所以上を展開する㈱ルネサンス(東京)による取り組み。
市ではワーケーションの推進により、交流人口や関係人口の創出、拡大を目指す。スポーツワーケーションによる仕事の生産性や創造性の向上を示し、企業のサテライトオフィス設置やテレワークで働く人たちの転職なき移住につなげる狙いもあり、市の地域資源である自然を生かしたアウトドアスポーツで地域振興策を探る。
事業では、同社の社員がスポーツワーケーションを体験し、活動量、心拍、脈波、感情などを測定。運動量とストレスの科学的分析などを行い、仕事の生産性向上、効率化の効果を検証する。実証実験は4泊5日で行い、参加者は和歌浦温泉萬波MANPA RESORTに宿泊。日の出とともにランニング、ヨガを楽しんだ後、同ホテルのコワーキングスペースで仕事。午後はシーカヤックなどのアクティビティを体験した後、仕事をこなす。サンセットヨガを行い、気持ちと体を整えて一日を終える――というもの。
気分転換しながら仕事ができるのも魅力の一つ。参加した、同社社員で埼玉県在住の小山真男さん(33)は「テレワークで家にいるとあまり体を動かさないが、運動するとスッキリして仕事に集中できる」、兵庫県在住の森下裕司さん(40)は「普段、閉塞感のある所で仕事をしているので、ここでは頭の切り替えができて生産性は上がっている」と日に焼けた顔で笑った。
アウトドアスポーツのインストラクターを務めた㈱BEACHTOWN(横浜市)の黒野崇代表(52)は「和歌山には海と山と街がコンパクトに詰まっている。空いた時間ですぐにアクティビティを楽しめるのがとても魅力的。スポーツワーケーションに和歌山は最適」と話す。
今後、市では、県内でワーケーション推進に力を入れる白浜町などと連携し、県全体でスポーツワーケーションの受け入れ態勢を整えていくことも視野に入れている。同市移住定住戦略課の小林健太班長(46)は「スポーツをすることで仕事の効率が上がることが立証されれば、企業にとってもメリットがあるので興味を持ってもらえると思う。和歌山市に来たらスポーツワーケーションができることを広め、企業のサテライトオフィス設置や、転職なき移住の誘致につなげたい」と話している。
11月と12月にも10人が実証実験に参加する。