地域バスを試験運行 11月から和市7地区

持続可能な交通ネットワークの形成を目指し、和歌山市は公共交通が不便な市内7地区で11月1日から来年2月末までの4カ月間、商業施設や病院などを経由して既存の鉄道駅などに接続する「地域バス」の試験運行を実施する。運賃は1回100円の低価格に抑え、1カ月1000円で乗り放題のサブスクリプションも初めて導入。運行結果を検証し、来年度以降の本格的な運行につなげる。

市内の公共交通利用者は、マイカー利用の増加や少子高齢化などにより以前から減少傾向が続いてきたが、新型コロナウイルスの影響で20年度以降はさらに急減。鉄道の市内駅の年間利用者数は、コロナ禍前後の2019年度と20年度を比べると、JR、南海電鉄がともに20%超の減少に対し、路線バスの減少幅はさらに大きく、823万9000人から45・5%減の448万7000人にほぼ半減した。

21年度は鉄道、バスともやや回復したものの、黒字路線の収益で赤字路線を維持してきた従来の手法は成り立たなくなり、地域の移動手段の確保は大きな課題となっている。

試験運行は、路線バスが近年廃止となったり、もともと運行していなかったりする、湊、有功、木本・西脇、安原、川永、四箇郷の6地区に加え、13年度から地元住民が運営主体となって地域バスの運行を続けている紀三井寺地区の計7地区で行う。年末年始(12月29日~1月3日)を除いて毎日運行する(紀三井寺地区は平日のみ)。

各地区とも、日常生活で利用するスーパーマーケットや商業施設、病院、公共施設などにバス停を設けたルートとし、JR線、南海線、和歌山電鐵など鉄道駅での乗り換えにも対応した運行ダイヤを設定。車両は9~12人乗りのワゴンタイプを使用し、一日6往復程度の運行を予定している。

安原、川永、四箇郷の各地区は、地域バスの運行は初めて。湊、木本、有功の3地区では昨年11~12月にも実証運行をしており、今回が2回目。前回の利用状況や住民からの意見を踏まえ、ルート変更やバス停の増設などをした上での再検証となる。

紀三井寺地区では、住民主体の運営協議会が13年度から地域バスを運行し、費用の8割を市が補助してきた。コロナ禍が利用者数の減少に拍車をかけ、運賃の値上げなどを余儀なくされてきたことから、今回の試験運行に合わせ、他地区と同じ運賃、サブスクの導入で利用状況を検証する。

尾花正啓市長は「公共交通不便地域をどうカバーしていくかを検討する大規模な試験となる。利用頻度や運営費などを検証し、来年度以降、本格的に運行していきたい」と話す。

本格運行の方法は、先行する紀三井寺地区の協議会方式に見られる課題なども踏まえ、今回の試験運行の結果を分析して検討する。

地域バスの試験運行について説明する尾花市長

地域バスの試験運行について説明する尾花市長