県が「財政危機警報」発令 基金も新設
和歌山県は6日、2023年度当初予算案を発表した。高齢化の進展や物価高騰、金利上昇などの財政収支への影響を新たに試算したところ、25年度に財政調整基金と県債管理基金が枯渇し、予算編成が困難になることが判明。岸本周平知事は、待ったなしの対策が必要だとして「財政危機警報」を発令し、23年度を「財政見直し元年」と位置付け、「事業の見直しや予算の賢いやりくりを徹底し、持続可能な県政に資する財政運営に努める」と表明した。
県は新たに32年度までの10年間の財政収支を試算。何も対策を講じなかった場合、収支不足を補い、自然災害などの不測の事態に備える貯金となる財政調整基金と県債管理基金(23年度末見込み残高209億円)は25年度で底をつく。
近年の積極的な公共事業の推進で、県内のインフラ整備や防災・減災対策は大きく進展した一方、県債の借り入れによる将来の財政負担も顕在化。試算では、県債残高は23年度見込みで1兆822億円(将来負担比率219%)が、25年度をピークに高止まりとなり、32年度は1兆967億円(同256%)。加えて941億円の基金不足が生じる。
公債費は、23年度見込みの717億円が、32年度には894億円に増加。国から地方交付税で財政措置される分を除いた県の実質的な負担額をみると、23年度の225億円が、32年度には1・9倍の436億円にほぼ倍増する見通し。調達金利が1%上昇した場合には、さらに33億円の利子負担が増える。
これらの危機的状況に対応するため、23年度から「公債費償還財源確保スキーム」を開始。22年度2月補正で公債費臨時対策基金を新設し、83・5億円を積み立て、公債費増加分(前年度比)の半分は同基金から取り崩し、残り半分は予算編成過程で捻出する。これにより、財政調整基金と県債管理基金が枯渇する時期を28年度まで先送りし、その間に収支の改善を進める。
公債費増加の背景として岸本知事は、国の財政措置の比率が小さい方法での公共事業の実施が積み重なっていたことなどを指摘し、「氷山の下に隠れていた借金が大きいことが分かった」と述べた。
収支改善の取り組みでは、次の24年度予算編成に向けて既存事業のニーズや費用対効果などを総点検し、予算の組み換えを行う他、国への公共事業の要望を事業部局と財政部局が一元的に管理することで、県の将来的な財政負担が少なく、有利な手法の活用を徹底することなど、「予算の賢いやりくり」を進める。