頂く命を大切に わかやまジビエの出前授業
和歌山県内で捕獲されるイノシシやシカの肉「わかやまジビエ」について学ぶ県の出前授業が8日、和歌山市秋月の市立宮小学校で行われ、1~6年の特別支援学級の児童ら約35人がシカやイノシシの革を使い、オリジナルキーホルダー作りを楽しんだ。
県では2017年度から、地産地消の取り組みの一環として、県内の小中学校などの給食食材にジビエを提供している。
本年度の出前授業は県内12の小中学校(10カ所)で実施されており、わかやまジビエの話の他、「調理実習」「クラフト」「獣毛筆作り」のいずれかの体験教室を開催。より身近にわかやまジビエを感じてもらえる機会へとつなげている。
この日、体育館に集まった児童らを前に、県畜産課主事の南安寿香さんは「県内のシカやイノシシなどによる農作物の被害金額は、毎年2億円ほどにまで上る」と説明。
実際にシカなどの捕獲に使われているわなを用意し、シカに扮(ふん)した職員がわなにかかる様子を児童らに見せ、「お肉はもちろん、1頭につき1枚しか取れない革もそう。一頭一頭の頂いた命を大切にしてください」と伝えた。
クラフト教室では、県内で捕獲されたシカやイノシシの革を活用して財布やキーケースなどの革製品に加工する事業を行う、有田川町のLettMelodia(レタメロディア)の代表、中井謙次朗さん(36)が講師を務めた。
中井さんが「和歌山のシカとイノシシの革を使って、思い出に残るものを作ろう」と呼び掛けると、児童らは革に金具を付けたり、ハンコでデザインを施したりしながらオリジナルキーホルダーを完成させた。
5年の田畑啓人(ひろと)さん(11)は「かっこいいのができた」とにっこり。柔らかいシカの革に触れながら、「命やからリュックサックに付けて大事にしたい」と話した。
どの動物の革かを当てる「革クイズ」では、児童らがシカやイノシシの他、豚や合成皮革などを含めたさまざまな種類の革に触れたり、においをかいだりしながら、大きさや毛穴、傷など、それぞれの特徴を学んだ。
中井さんは昨年、パリで開かれた世界の革を集めた展覧会に参加。わかやまジビエの革が海外の人から高く評価されたといい、「ごみになっているものが、PRの仕方や使い方によっては世界に羽ばたくものになる可能性があることを知ってもらい、みんなにも和歌山のいいものを見つけていってほしい」と期待を込めた。