清水達三さんの日本画 城ホールに寄贈

和歌山県内初の日本芸術院会員になるなど日本画家として数々の功績を残し、2年前に亡くなった和歌山市の清水達三さんの絵画「海霧(うみきり)」が、同市七番丁の和歌山城ホールに長女・薫さんから寄贈された。

清水さんは、日本画家の中村貞以氏、長谷川青澄氏に師事し、1963年、院展に初入選。91年、院展日本美術院賞に輝き、日本画家としての評価を固めた。2001年には院展内閣総理大臣賞を受賞。08年に日本芸術院賞・恩賜賞を受賞し、県内初の同院会員となった。17年に旭日中綬章を受章。県美術家協会会長をはじめ県展や市展の審査員を務め、絵画教室を開くなど同市の美術振興と後進の育成に尽力。21年12月に85歳で亡くなり、従四位に叙せられた。

寄贈された絵画は、縦1・68㍍、横2・9㍍の大作。串本町田原海岸で冬の早朝、海面近くの空気が冷やされて濃霧のようになる現象「海霧」を題材に、金箔と岩絵の具を用いて、雲間から差す朝日の光を幻想的に表現した。清水さんが現地で取材し、2016年に制作した作品。19年に三重県伊勢市の神宮美術館で開かれた天皇陛下御即位30年と同館の開館25周年を記念した特別展でも展示された。

寄贈式には、薫さんや尾花正啓市長らが出席。同ホール3階に展示し、披露された。

薫さんによると、清水さんは生前、同ホールに作品を寄贈したいと話していたという。

県展で知事賞に輝くなど、自らも日本画に造詣が深い薫さんは、「『海霧』は、晩年父が描いた絵画の中で、私が一番好きな作品。地元の風景を愛した画家・清水達三の絵を広く市民の皆さんに見ていただければ」とし、「日本画を間近に見て、興味を持つきっかけになれば、私もうれしいし、父も喜んでくれるはず」と話した。

絵画「海霧」と長女の薫さん㊨(和歌山市提供)

絵画「海霧」と長女の薫さん㊨(和歌山市提供)