紀中で栽培「マスクメロン」

前号では、種ごと食べられる新品種のスイカで、県内でも栽培されている「ピノ・ガール」を取り上げた。お盆を過ぎ、小玉スイカの姿を見る機会は減ってきたが、この季節にいただきたい人気の高級フルーツがある。今週は、県内でも栽培されている「メロン」の歴史と特徴を紹介したい。
メロンはウリ科の一年生植物。園芸分野では「果菜(実を食用とする野菜)」に分類されるが、青果市場での取り扱いや栄養学上は果物や果実として分類されている。インドが原産とされ、その歴史は古く、紀元前2000年ごろから栽培が始まったという。一般的に、原産地から西方に伝わった品種群をメロン、東方に伝わったものをウリと呼ぶ。
国内で初めてマスクメロンが栽培されたのは明治26年ごろ。新宿御苑に導入された温室で研究が行われ、栽培方法が確立されたという。昭和7年から静岡県で商用の栽培が始まった。高級品として名高い「夕張メロン」は昭和36年から栽培が行われている。
昭和52年には日本の種メーカーが「アンデスメロン」を開発し販売を開始。栽培難度が高いとされるマスクメロン(アールスメロン)に味が近く生産が容易であることから、これらの品種が増え、メロンが一般的な存在となった。
農水省統計(2021年)によると、国内の収穫量1位は茨城県(約24%)、2位は熊本県(約17%)、3位は北海道(約14%)。和歌山県は2016年の統計値で39位。出荷量は122㌧で全国出荷量の0・1%にすぎないが、主に御坊市などの紀中地域で栽培されている。
筆者が産直市場で購入したアールスメロン系の「ビセンス」という品種は1玉2500円程。滑らかな食感と濃厚な甘みがたまらない。栽培量は少ないが地元で作られる貴重な逸品。ぜひ、食べてみてほしい。
(次田尚弘/和歌山市)