養殖や食育など連携 くら寿司と県が協定
和歌山県と回転ずしチェーン大手のくら寿司㈱(堺市)は5日、水産業の振興や食育などを通じた地域活性化を目指す包括連携協定を結んだ。同社が由良町で養殖している「オーガニックはまち」の生産体制強化をはじめ、養殖技術の開発・普及での連携、水産業の就業機会の創出、県産品を活用したメニュー販売など多様な取り組みが想定されている。
県と外食産業の包括連携協定、同社と自治体との包括連携協定はいずれも今回が初めて。
協定に基づく主な連携項目として、①漁業振興②県産品の販売と活用③食育・環境保全活動――を設定。漁業振興では、水産業就業機会の創出、養殖技術の確立に向けた開発・普及、水産資源の保全などに取り組み、県産品の販売と活用では、県産品を使ったプロモーションの実施、輸出振興、大阪・関西万博での連携を進める。食育・環境保全活動では、魚食の普及や食育への協力、海岸や漁港の環境保全などを行う。
オーガニックはまちは、同社の子会社「KURAおさかなファーム」が2018年から研究開発を進め、国際基準を満たした日本初のオーガニックフィッシュとして認証を取得。由良町に養殖場があり、地元の漁業協同組合に加入した上で漁業権を取得するなど、すでに地域連携の実績があり、今後は養殖技術の開発で県と連携を図ることにより、生産体制の強化につなげていきたいとしている。
締結式は県庁知事室で行われ、くら寿司から田中邦彦社長、田中信副社長、顧問の多田純一元県議らが出席。田中社長と岸本周平知事が協定書に署名した。
岸本知事は、オーガニックはまちの養殖場を視察したことにふれ、「取る漁業だけでなく、育てる漁業にも県としてますます力を入れていきたいと考えている。和歌山で養殖したオーガニックはまちは、世界に売り出せる財産ともいえるので、一緒に取り組んでいきたい」と期待を寄せた。
田中社長は、毎週のように和歌山市加太を訪れ、自ら魚を釣り、店舗でも提供していることを紹介。観光資源にも恵まれた和歌山への愛着を示し、「和歌山の魅力を発信することで、地域の活性化につなげていきたい。和歌山と一緒になって世界で頑張りたい」と力強く話した。
締結を記念し、同社は15日まで、県産魚を使ったすしなどを提供する「秋の和歌山県フェア」を、同社のハイグレード回転寿司ブランド「無添蔵」(紀伊川辺店など4店舗)で実施している。
加太の「鬼あじ」をはじめ、あぶりタチウオ、マダイの握り、釜揚げシラスの軍艦巻き、柿の葉寿司などを味わうことができる。