吃音の学生が模擬授業 夢への一歩、理解促進
滑らかな発音が苦手な、吃音(きつおん)のある教員志望の大学生による模擬授業が18日、和歌山県海南市日方の海南ノビノスで行われた。3人の女子学生が教員役を務め、吃音の理解をテーマに思いを伝えた。
吃音は、話し言葉が滑らかに出ない発話障害の一つ。音の繰り返しや引き伸ばし、言葉を出せずに間が空いてしまうなどの症状があり、全国に約120万人いるとされている。
主催は、吃音当事者による活動団体「号令に時間がかかる教室」。教員を目指したくても一歩踏み出せない人に、模擬授業への挑戦で自信を持ってもらい、その姿を通じて吃音を知らない人にも理解が広まるようにと開催。2013年に大阪でスタートし、京都、徳島に続き、和歌山が全国で4番目の実施となった。
和歌山市出身で大阪教育大学2年生の角谷祐実さん(20)、紀の川市出身で滋賀大学教育学部3年生の藤原実緒さん(21)、大阪府出身の大学2年生の森田実玖さん(22)が順番に講師となり、生徒役として参加した10~60代の17人に授業を行った。
角谷さんは人前で授業をするのは初めて。9月に小学校での教育実習を控えている。授業では、小さい頃から吃音で悩み「声でコミュニケーションを取りたくない」と手話を習ったことがきっかけで、さまざまな障害について興味を持つようになったことを紹介。「特別支援学校の先生になりたい」と夢を持ち始めたが、「こんな自分が先生になっていいのだろうか」と葛藤したという。そんな時、高校の保健室の先生から「あなただからこそ生徒に寄り添い、他人の痛みが分かる先生になれるのでは」と言われ、決心したと振り返った。
吃音の人に対して絶対にしてはいけないのが、笑ったり、まねをしたりすることだとし、「吃音が出た場合、最後まで思ったことを言いたい人と、代わりに言ってほしい人など、一人ひとり思いは違う。どうしてほしいか本人の気持ちを聞くことが大事」と伝えた。
高校時代、角谷さんの夢を聞き、背中を押した高校の養護教諭・前窪貴美さん(66)は授業を見守り「高校の頃より声も大きく、堂々と自信に満ちあふれている姿を見られてうれしい」と感動の様子。
角谷さんは「1回失敗すると言えなくなることがあるから緊張したが、うまくできたと思う。一歩踏み出せてうれしい」と笑顔だった。
教育実習の経験がある藤原さんは「口元を見られるのが怖くてずっとマスクを着けていたが、今回初めてマスクを外して人前で話した。言葉につまったけど、温かい空気で聞いてもらえたので前進できた」と話していた。