南海トラフ地震想定 和歌山市で訓練

東日本大震災から13年の節目を迎えた11日、和歌山市は南海トラフ巨大地震を想定した総合防災訓練を実施した。能登半島地震の災害対応も踏まえ、刻一刻と集まってくる被害状況への初動対応や情報の確認、関係機関との情報共有、連携などを同時進行で行い、延べ約460人が参加する大規模なものとなった。

訓練の想定は、11日午前4時45分に県南方沖を震源とするマグニチュード9・1の南海トラフ巨大地震の発生により、和歌山市は最大震度7を観測し、大津波警報が発令される中、市内沿岸部の一部で浸水被害が発生し、ライフラインは寸断状態、電話などの通信機器も市内全域でつながりにくい状況とした。

訓練は発災3時間後に設定した災害対策本部会議から始まり、尾花正啓市長を本部長に、副市長、局長級の幹部職員らが出席し、まずは分かっている被害状況を共有。4時48分の大津波警報発令直後に沿岸部の33地区、11万7577世帯、23万9639人に避難指示を出し、5㍍の津波が到達したこと、人的被害はまだ把握できていない一方、道路の破損や液状化現象、断水をはじめライフラインの被害が発生していること、すでに陸上自衛隊に派遣要請をしたことなどが次々と報告された。

尾花市長は、県に対して災害救助法の適用や支援物資の提供を要請するよう指示し、人命救助を最優先の上、通れなくなった道路の啓開、飲料水や人工透析の対応を含めた給水の準備、避難所の飲食料品の確保などに取り組むように話し、「職員の安全を確保しながら全庁挙げて迅速に、臨機応変に対応してほしい」と呼びかけた。

続く初動対応と情報連携の訓練では、消防庁舎の災害対策本部室に職員が集まり、津波の被害、土砂災害、火災の発生、市施設の被災状況、電気やガスのストップ、公共交通機関の状況など、刻一刻と報告される詳細な情報を地図やホワイトボードに書き込んでいき、人員の派遣など対応の指示、関係機関との連絡などが慌しく行われた。

室内のプロジェクターには土砂崩れの様子を撮影したドローンの映像が映し出され、午前9時10分に震度6弱、同45分に震度6強の余震が発生したとして、職員らが作業を中断して机の下にもぐり、安全を確保するなど、緊迫した状況の中で訓練は続いた。

訓練終了後、亀井利昭理事兼危機管理局長は「どの段階でどういう対策が必要なのかを認識する上で訓練は成果があった。今後も能登半島地震を含むこれまでの災害の教訓を生かし、全庁的に災害対応能力の向上に取り組んでいきたい」と話した。

被害状況を地図に書き込む職員ら

被害状況を地図に書き込む職員ら