紀州徳川家19代当主、宜子さん講演

 紀州徳川家19代当主・徳川宜子(ことこ)さんを迎えての和歌山ロータリー・クラブ(樫畑直尚会長)創立75周年記念講演 「絆~未来へのおくりもの」 が28日、 和歌山市七番丁のモンティグレ(ダイワロイネットホテル和歌山)で開かれた。

 宜子さんは、 「紀州への想い」 をテーマに講演。 母・寶子(とみこ)さんが子どもの頃、 焼失前の和歌山城天守閣(国宝)に、 父・頼貞(よりさだ)公と登った時の話などを披露し、 系図や家族写真、 ゆかりの 「南葵文庫」 「南葵楽堂」 の写真などをスライドで紹介した。

 15代・頼倫(よりみち)公が和歌山出身の若者を援助する 「南葵育英会」 を設立したことについては、 「紀州の発展を熱く願った」 とし、 史績名勝天然記念物保存協会初代会長を務めたことも紹介。

 南葵文庫の裏庭に計画した茶室 「高風居 (こうふうきょ)」 には、 西浜御殿の茶室や和歌山城の一の橋御門、 紀州東照宮など、 紀州由来の建物の木片や、 城内の古木が使われていると話した。

 音楽が好きで、 ヨーロッパの王室などと交流を深めた16代・頼貞公については、 「日本の外交のある一面を担っていたのではと思います」 とし、 イタリアの作曲家プッチーニに頼まれて集めた400年前の中国の楽譜が、 もし無事にプッチーニの元に着いていたら、 「歌劇 『トゥーランドット』 は今のようになっていなかっただろう」 という頼貞公の言葉も紹介した。

 建築家として東京建築士会評議員などを務めている宜子さんは、 藩校から日本の教育を考える集まりで活動し、 「NPO紀州熊野応援団」 の応援も行っているという。

 最後に 「徳川家宗家と尾張徳川家、 水戸徳川家、 高松松平家の跡継ぎと5人でことし新年会をしました。 5人の当主が集まったのは370年ぶりです」 と話して会場を沸かせ、 「今後も紀州のこと、 徳川家のことを思いながら活動させていただきます」 と話した。

 その後、 「近代史における紀州徳川家の役割」 と題して宜子さんと樫畑会長、 南葵育英会の小関洋治理事長による鼎 (てい)談が行われ、 日本初の私設図書館 「南葵文庫」 (後に蔵書を東京大学に寄贈)と 「南葵育英会」 を設立した頼倫公の功績、 日本初の本格的音楽ホール 「南葵楽堂」 や 「南葵音楽文庫」 を開設した頼貞公の功績などが語られた。

 樫畑会長は今回の記念事業について、 「過去の遺産に目を向け、 気概や自負、 プライドを掘り起こし、 地域愛を呼び起こそうという展開です」 と話している。