核のごみ処分の適地か 尾池元京大総長講演
原子力発電所の使用済み核燃料から出る高レベル放射性廃棄物「核のごみ」の最終処分について考える講演会が、和歌山市の市男女共生推進センターで開かれ、京都大学元総長で地震学者の尾池和夫さんが、日本国内で唯一の期待できる選択と指摘する南鳥島について語った。
核のゴミを考える実行委員会(島廣樹代表)が主催、市民連合わかやま、週刊金曜日わかやま読者会が共催。
「核のごみ」については、放射能が自然界に存在するレベルに低減するには数万年を要することから、地下の岩盤に埋設する「地層処分」が、現時点で最も安全で実現可能な処分方法とされる。原子力発電環境整備機構(NUMO)などは、地層処分の適地が日本列島に広く存在するとの認識を示しているが、地球科学の専門家有志は2023年10月、地殻変動の激しい日本には適地はないとの声明を発表している。
講師の尾池さんも、地球科学の専門家として適地が「広く存在する」ことに異を唱える一方、日本最東端の南鳥島を地層処分の候補地に提案してきた。
講演で尾池さんは、「核のごみ」を考える前段として、人間の認知の在り方や、科学的判断を行うための知識は更新されていくことなどを説明。例として、福井県の敦賀原子力発電所2号機について、原子炉建屋の真下の断層が将来動く可能性が否定できないとして、原子力規制委員会が初めて再稼働を認めない判断をしたことを挙げ、原発の建設当時には活断層に関する審査基準はなく、事後の法整備によってできたことを紹介した。
さらに、地図上で地震の分布を示し、安定大陸と変動帯の違いを説明。「変動帯では地盤に割れ目ができる。活断層の近くは何が起こり、どう動くのか、現象を予測することができる」と述べ、日本の国土のほぼ全域は変動帯だが、南鳥島は例外的に、世界で最も安定した海洋プレート上にある国土であると指摘した。
南鳥島が位置する太平洋プレートは生まれて約1億5000万年が経過し、マグマ活動が終わっていること、活断層の活動による地震の発生、地滑りなどの変動帯特有の不安定要素がないなどの特徴がある。島には海上自衛隊と気象庁の施設があり、職員が駐在するのみで、一般の市民はおらず、「核のごみ」の最終処分地として唯一の期待できる選択である理由を示した。
講演後、聴衆を交えた意見交換、質疑も行われた。