高濃度の炭酸ガス、市内の「療養泉」
前号では、茶褐色をした和歌山市内の温泉が、有馬温泉の金泉と同様の「鉄泉」であり、全国的にも珍しい存在であることを取り上げた。
温泉分析表を見るなかで、さらなる魅力が見えてきた。今週は泉質欄で「含二酸化炭素」と記され、溶存ガス成分中の「遊離二酸化炭素」の含有量が多い温泉の効能を紹介したい。
和歌山市内の温泉の特徴を調べるなかで目に留まったのが「遊離二酸化炭素」の量である。有馬温泉には、金泉と銀泉の2種類があることを皆さんもご存じだろう。銀泉は金泉と打って変わって無色透明。泉質は炭酸泉に分類される。有馬温泉で炭酸煎餅が製造され温泉客に人気であるのはそれが理由である。
環境省によると、1948年に制定された「温泉法」により、地中から湧出する温水のうち、摂氏25度以上、遊離二酸化炭素が1㌔中1000㍉㌘以上のものを、治療の目的に供しうる「療養泉」と定義している。有馬温泉の銀泉は1㌔中1000㍉㌘以上の二酸化炭素を含み療養泉とされる。
和歌山市内の温泉もこの数値を上回るもので療養泉に分類される。さらにいえば、金泉と同じ鉄泉であるため、いわば、金泉と銀泉のハイブリッドといって過言ではない。
炭酸泉の効能は、温泉に溶け込んだ高濃度の炭酸ガスが皮膚から吸収されることで血管を拡張し血行を促進する。欧州では炭酸泉が多く、医療にも取り入れられており「心臓の湯」として名高い存在。日本では全国の温泉の約0・5%程度と希少性がある。
有馬温泉の金泉と銀泉に類似する全国的にも珍しい湯が身近なところに。深まる秋を感じながら、自然の恵みを受けてほしい。(次田尚弘/神戸市)