「温泉」と「サイクリング」の融合
前号では、和歌山市内の温泉が、有馬温泉の「金泉」と同様の「鉄泉」と、「銀泉」と同様の遊離二酸化炭素量が豊富な「炭酸泉」の両方を含む、ハイブリッドな存在であることを取り上げた。有馬温泉では、地域が持つ魅力を生かした、新たな旅行者の獲得に向けた取り組みが始まっている。
過去に神戸市などが企画し開催された「サイクルロゲイニング」のイベントでは、有馬温泉を中心に六甲エリアなど、サイクリストのレベルに分けた六つのコースを用意。完走後に有馬温泉の好きな温浴施設で日帰り入浴を楽しめるというもの。
サイクルロゲイニングとは、自転車で特定の地域を巡るイベント。ロゲイニングとはナビゲーションスポーツの一種とされ、地図を基に制限時間内にチェックポイントを巡り、得点を集めるスポーツ。有馬温泉では、周辺地域の美しい景観や起伏の激しい地形を組み入れたコースを設けるなど、神戸の自然資源を生かしたサイクルツーリズムが推進されている。
また、世界各国からサイクリストがバーチャルで参加し、有馬温泉から六甲山を目指すオンライン上のレースが行われ、後日、実際に現地でレースを行うオフライン型のイベントを開催し、世界からの誘客を図るなど、eスポーツとの連携も進む。
和歌山県内では鉄道沿線の活性化を目的としたサイクルロゲイニングが開催されている。チェックポイントとされる観光地を巡り完走した参加者に土産品を提供。人気を博し、和歌山県がサイクリング王国と称されるゆえんともいえるイベントである。
観光資源とサイクリングを組み合わせた取り組みが進む昨今、サイクリング初心者でも気軽に楽しめるものとして、市内の魅力的な温泉が活用されることを期待したい。(次田尚弘/神戸市)