大空にカイロスの雄姿 打ち上げ後「飛行中断措置」
宇宙事業会社スペースワン㈱(東京都)の小型ロケット「カイロス」の2号機は18日午前11時、串本町の「スペースポート紀伊」から発射され、人工衛星搭載部を覆うフェアリングの分離まで進んだが、その後に飛行中断措置を行い、国内初の民間単独での衛星の軌道投入には至らなかった。近隣2カ所の公式見学場などで見守った多くの人々は、宇宙に向かって進むカイロスの雄姿に沸き、3号の成功に期待を寄せた。
初号機が発射直後に飛行を中断して自爆した3月13日の衝撃から9カ月。同社は、原因分析によりカイロスの機体や燃料、内蔵された自律飛行安全システムの作動に問題はないとし、設定などを見直して年内の2号機打ち上げにこぎ着けた。上空の強風のため14、15日の延期を経て18日はようやく大空を駆けるカイロスの姿を見せるまでに至った。
田原海水浴場(和歌山県串本町)と旧浦神小学校(那智勝浦町)の2カ所に設けられた公式見学場の来場者は計約1000人に減ったものの、「今度こそは」と打ち上げの瞬間を見に訪れた人々の応援の熱気は高かった。
田原海水浴場では、ライブ映像を映す大型モニターはなくなったが、地元の観光協会や飲食店などはこの日も出店し、来場者を歓迎。司会者が打ち上げ1分前からカウントダウンするなど、発射を待つ人々の気持ちを盛り上げた。
スペースポート紀伊では、天候判断、機器・設備の起動、安全確認、点火の順に準備が進められ、予定通り11時に打ち上げ。数秒後に同海水浴場の山肌からカイロスが姿を見せ、ロケット雲を伴いながら、力強く空を上っていった。
来場者は喜びに沸き、ロケットの雄姿を撮影するなどしながら、祈るように軌道を見つめた後、田嶋勝正町長の音頭で万歳三唱。その後、会場に飛行中断措置が取られたとの情報がアナウンスされると、やや落胆ムードとはなったものの、カイロスを見られた感動は冷めやらず、次への期待の声が聞かれた。
イプシロンロケットを5回見に行き、ロケットにはまっているという大阪府阪南市の織田知子さん(48)は「毎回、感動が違います。ここはロケットがより近くで見られるのがいい。大阪から来るのも近く、次も来ます」と話し、御坊市から訪れた公務員の濱田真衣子さん(25)は「(カイロスが飛ぶ姿は)感動して『すごい』としか言えない。あんな飛び方をするんだと思いました。残念さは残りますが、前回よりも進んだので、次に期待しています」と語った。
田嶋町長は「きれいに打ち上がったように見えて感動したが、ロケット技術の難しさを感じた。一つひとつステップは上がっている。3号機に向けてスペースワンは原因究明と対策をとるはずなので、次こそ成功して、本当の万歳を皆さんとしたい」と話した。