伝説発祥の地で初演舞 フラメンコの森さん

「オペラ座の怪人」や「源氏物語」など、さまざまな物語や情愛をフラメンコで表現してきた和歌山市の舞踊家・森久美子さん。30日に日高川町の道成寺での「炎の道成寺・清姫伝説」の公演を控え、森さんは「伝説発祥の地での公演です。今までの集大成という気持ちで一層気を引き締めて挑みたい」と意気込んでいる。
安珍・清姫伝説は、同寺にまつわる悲恋の物語。思いを寄せた僧の安珍に裏切られた清姫が大蛇になり、同寺で鐘に隠れた安珍を焼き殺し、自らも川で命を絶ってしまう。古くから能や歌舞伎、浄瑠璃で広く演じられてきた。
2006年の初演から今回で5回目となり、同寺では初めて披露する。森さんは物語の魅力を「大昔の伝説ですが、今の混沌とした世の中でも起こりうる、人間の傲慢さやずるさを克明に浮き彫りにしている」と話す。
23年の4回目公演を終えて森さんは一度、清姫伝説を終了したが、今回、30日の催し「桜・舞・道成寺」を主催する同町から熱い要望を受け、再び腰を上げた。境内特設舞台で3団体が演目を披露。森さんが主宰する「森久美子フラメンコ舞踊団」が清姫伝説でエンディングを飾る。
森さんが脚本を担当し、音楽や演出にこだわって前回の台本からさらに手を加えた。安珍と清姫の恋の象徴として「桜の木」を効果的に用い、同寺に奉納されている鐘も登場する。寺の敷地には、安珍が焼き殺されたとされる鐘があった「鐘つき堂」跡や、清姫の怨念でねじれたという木も残っている。森さんは「清姫たちに失礼のないように伝説を読み込みました。形跡を肌で感じながら舞台を楽しんでもらえたら」と話している。
事前予約のチケット(入場料500円・指定席料込み)は完売し、晴天の場合は追加の当日券(先着80人)が午後3時から発売される。午後3時半開場、4時開演。
森さんは「桜舞う道成寺の境内で、情念がさまざまに移り変わる清姫を、鮮やかに艶やかによみがえらせたい」と話している。