「声を聴く」政治貫く 休みなく走り続けた岸本氏

衆院議員時代、岸本周平さんは「政治に身を投じてから休日はありません」と語ったことがあった。
財務官僚、トヨタ自動車での経験を引っ提げて初めて衆議院に挑戦したのは2005年。落選した翌日から09年の初当選まで毎日、当選後は地元に戻った週末に、欠かさず和歌山市各地の街頭に立ち、人々と語らう活動を貫いた。飾らない振る舞いで市民に親しまれ、絶大な知名度を築き、保守王国と呼ばれる和歌山で5回続けて自民候補に勝利した。
ある支援者は「路上からはい上がった政治家」と誇らしげに語り、熱心な応援団が選挙と政治活動を支えてきた。
自民から推薦を受けた知事選では、支持層の一部から反発もあったが、知事に就任すると、県内各地で県民の声を聴く「タウンミーティング」や県職員との「おにぎりミーティング」を開始し、街頭で磨いた声を聴く政治スタイルを、県政でも発揮した。
保守とリベラルの姿勢を併せ持つバランス感覚で、子ども食堂の拡充、パートナーシップ宣誓制度の導入などを実現させ、県庁の職場環境の改善にも精力的に取り組んだ。
1期目の道半ばでの死去。休むことなく走り続けた政治家人生だった。(伸)
