岸本さんに最後の別れ 弔問の列絶えず

多くの参列者が訪れた岸本さんの通夜
多くの参列者が訪れた岸本さんの通夜

15日に敗血症性ショックのため68歳で急逝した岸本周平知事の通夜が16日、告別式が17日、和歌山市の吹上ホールで営まれた。各界に幅広い人脈を築き、庶民的な政治姿勢で親しまれた岸本さんの冥福を祈ろうと、政財界をはじめ、文化、教育などさまざまな分野の関係者、一般県民らが数多く参列した。

岸本さんの後援会関係者によると、当初は家族葬で行う話もあったが、にぎやかなことを愛した岸本さんを、好きだった選挙のイメージで送ってあげたいとの遺族の意向を受け、一般葬となったといい、後援会のスタッフは選挙のトレードマークとなっていた黄色いジャンパーを着て、参列者の案内などに当たった。

通夜では、開式1時間以上前から参列者が続々と訪れ、開式時にはすでに式場の外まで長い列ができ、岸本さんの交友の広さ、愛された人柄を物語っていた。

開式前には和歌山市出身のバイオリニスト、東京藝術大学前学長の澤和樹さんが棺の前でマスネの「タイスの瞑想曲」を独奏し、岸本さんにささげた。

政界からは、玉木雄一郎国民民主党代表、辻元清美立憲民主党代表代行、全国知事会会長の村井嘉浩宮城県知事らが参列し、関西広域連合の知事や政令市長、県内の市町村長、県議、市町村議らの姿が見られた。

喪主で岸本さんの妻・香織さんは「優しくて、いつも包み込んでくれるような存在でした。困っている人を助けたい、子どもたちがのびのび元気に育つ環境をつくりたい、人権重視で平等な社会をつくりたいと心より思っていました」と夫について語り、県庁の若手職員との「おにぎりミーティング」の様子を楽しそうに語っていたことなども紹介した。

大好きでよく食べていた和歌山のイチゴとフルーツトマトが、食べやすい大きさに切った状態で知事公舎の冷蔵庫に手つかずで残されていたこと、東京でも、香織さんが食べやすいように、イチゴをカットして冷蔵庫に入れてくれていたことも話し、「本当に優しかったんです」と笑みを見せた。

岸本さんの財務省の後輩で、衆院当選同期、共に国民民主党結党に参加した玉木代表は「親身に相談に乗ってくれ、一番の『番頭』として私を支えてくれた。朗らかで、人に優しく、本当に素晴らしい政治家であり、人物だった。岸本さんを失ったことは和歌山の損失であり、日本の損失であると思う」と悼んだ。

3月末で退任したばかりだった下宏前副知事は「新しい考え方を県庁に持ち込んでくれた。県庁職員の意識も変わりつつあり、一致団結して県政の課題に取り組んでいこうという機運が生まれていた矢先だったので、本当に残念だ。お通夜でこんなに涙が出たのは初めてだ」と声を震わせた。

県庁前では大勢の職員らが見送った
県庁前では大勢の職員らが見送った

17日の告別式では、棺に花が手向けられ、参列者が出棺を見送った。岸本さんを乗せた車は2年4カ月にわたり政務を執った県庁の前を通り、約800人の職員らが別れを惜しんだ。