りら高生がカヤ油を製造 高野山へ150年ぶり奉納

高野山の山麓に位置する和歌山県紀美野町真国宮のりら創造芸術高校の部活動「りらファクトリー」の生徒たちが、同町で採れた榧(カヤ)の種子から油を搾り、このほど高野町の高野山真言宗総本山金剛峯寺に奉納した。

同町のカヤ油は、江戸時代には高野山へ年貢として納めていたと伝えられており、地域に眠る価値を高めようと、同校の生徒たちが製油を復活させ、約150年ぶりの奉納となった。
カヤは同町の「町の木」。町内には200本以上が自生し、全国でも有数の自生率を誇る。種子は良質な食用油の原料に利用されてきた。カヤの油は凝固点が低く、冬の灯明には欠かせないもの。
りらファクトリーは、地域の新たな特産品になるものを開発し産業を盛り上げようと、地域おこしなどに取り組み、これまでブドウハゼの原木を発見して、県天然記念物への再指定を果たし、ブドウハゼとカヤを使用したオーガニック化粧品を開発するなど歴代の生徒から活動をつないできた。
生徒たちが地域と交流する中で、古くから住民らはカヤの種を食べ、油は天ぷらなどに使用し、生活に欠かせない食料だったことを聞いていた。
昨年の高野山研修で、寺院関係者から大切な行事には今もカヤ油を使用しているが、今は手に入れることができないことなどを聞き「今やることに意味がある」と製造を決意した。
カヤ油は種から採れる。生徒たちは油を搾ったことのある住民から話を聞き、製造を始めた。種を砕き、蒸して搾油するが、初めは油が出ず砕く大きさを変え何度も試した。120㌘分の種から採れる油は大さじ2杯程度だといい、150㍉㍑の奉納を目指して作業を繰り返し、完成させた。
今月10日に高野山で奉納が行われ、1200年以上燃え続けているとされる奥之院の「消えずの火」から火を移した。
3年の大北陽茉梨部長は「何度も砕き搾る作業が大変だったが、神聖な雰囲気の中、自分らが搾った油を奉納でき感慨深い。産業化を目指し続けていきたい」と話し、寺院関係者は文化圏の高校生が復活させてくれたと高く評価した。